国内債券の重視鮮明…生保9社の下期資産運用計画は?
国内の主要生命保険9社の2023年度下期の資産運用計画は、上期に続き国内債券を重視する姿勢が鮮明になっている。9社中7社が国内債券を積み増す。7月に日銀が10年国債利回りの上限を0・5%から1%まで許容するイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の修正を実施。各社とも円金利の上昇を見据え国債を増やす。大方は24年度上期にもYCC修正やマイナス金利撤廃で日米の金利差縮小を想定。為替は23年度末にかけ、今より円高方向に動くとみている。
9社の10年国債利回りの想定レンジは、おおむね下限が0・5%、上限が1・00%。日銀が設定したYCC上限1%を上回ると予想する企業が3社あった。
1・10%を予想する日本生命保険は「米国で利上げがもう1、2回あった場合、つられて上がる可能性がある」(日本生命の都築彰執行役員財務企画部長)とした。
長期の保険契約が多い生保各社は、従来から取り組むALM(資産・負債の総合管理)運用により、20―40年の超長期国債を積み増す方針は継続する。国内債券を減らすとした富国生命保険と大樹生命保険も、超長期国債に資金配分する方針を示し、償還を迎える債券が多いことから減少を見込む。
一方、米国の10年国債利回りが5%前後まで上昇し、為替ヘッジコストの高止まりを嫌気してヘッジ付き外債を減らす企業が多い。足元のヘッジコストは6%前後まで上昇し、5%の利回りだと、10年債は保有しているだけで収支マイナスになる。富国生命は「収益性の改善が見込めず、9月末までに売却かオープン外債化した」(富国生命の鈴木善之執行役員財務企画部長)とし、ヘッジ付き外債の残高がゼロとなったことを明かした。
ドル円相場は、1ドル=125―155円の範囲を予想する。下限を135円に設定している明治安田生命保険は、8月時点の予想となっており、目下、現状を反映した予想に見直している。
注目される日銀のYCCとマイナス金利の撤廃時期は、24年春の春闘での賃上げ動向を踏まえ、24年度以降に実施するとの指摘が多い。
米国は24年度に利下げに転じる可能性が高く、日米金利差の縮小を為替市場は前倒しで織り込み、23年度末にかけて足元の1ドル=150円前後から同140円台前半まで円高が進むとの見方が大勢を占める。
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