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東京海上・損保ジャパン…大手損保が風災保険金支払いの自動化加速

東京海上・損保ジャパン…大手損保が風災保険金支払いの自動化加速

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台風が頻発する中、大手損害保険各社が風災の保険金支払いの自動化に力を入れている。東京海上日動火災保険は、個人向け火災保険の事故受付から支払いまでのすべての行程で自動化を実現。顧客の申請書類に不備がなければ、支払い手続き完了までの時間を従来の1―2週間から最短1時間に短縮できる見込みだ。他の損保会社もベンチャーと組むなどして自動化を進める。業務効率化で火災保険の収益改善を図る。保険金支払いの迅速化で顧客満足度の向上にもつなげる。(大城麻木乃)

東京海上の火災保険手続き自動化フロー

風災は台風などで屋根が飛んだり、家のフェンスが壊れたりする建物損害の被害などが挙げられる。 東京海上はウェブなどから事故連絡を受け付けた後、工場の自動化ラインのように、基本的には人手を経ずに手続きが進む仕組みを整えた。例えば、事故連絡時に顧客が郵送で保険金請求をしたいと望んだ場合、契約書の住所から自動で書類発送を手配する。ウェブ請求を望んだ場合は、自動でスマホなどにURLを送る。

修理の見積書など請求に必要な書類を東京海上が受け取った後は、人工知能(AI)を活用した保険金の不正請求検知システムで書類を自動チェックする。仮に疑わしい書類を発見した際には、人手で確認する。問題がなければ、また自動化ラインに戻す。

「判断を伴う業務は人手で行い、それ以外は機械に任せる」(担当者)方針だ。東京海上は、自動化により約3割の業務削減効果を見込む。

損害保険ジャパンは英国の保険ベンチャー、トラクタブルのAI技術を活用し、損害額を自動で算出する。顧客がスマートフォンから提出した建物の損害箇所の写真をAIが解析する仕組みだ。AIは、例えばフェンスが壊れると何万円の修理費になるといった過去の膨大なデータを基に、金額をはじき出す。

通常、保険金を請求する際には修理業者に修理金額の見積書を作成してもらい、その書類を保険会社に提出する必要がある。台風などの広域災害時には、修理業者が多忙を極め、契約者が見積書を入手するのに1カ月以上かかる場合もある。新たな技術の導入で、損保ジャパンは従来、保険金の確定まで数週間かかったが、最短で事故受け付け当日に確定できるという。

三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険もトラクタブルの技術を採用している。また両社は顧客が提出した保険金請求書類や手続きの進捗(しんちょく)状況をクラウド上のデータベースで一元管理し、万が一、社員が台風で被災してもリモートワークで支払い手続きに対応できる体制を敷く。

各社が風災対応に力を入れる背景には、自然災害の中でも風災の保険金請求件数が多いことがある。東京海上の場合で、22年度に自然災害の請求件数に占める風災の割合は約45%と、地震の20%や水災の2%よりも圧倒的に多かった。

件数の多い分野からデジタル化を進め、業務削減効果を最大化する考えだ。


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日刊工業新聞 2023年09月12日

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