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「LINE」「ヤフージャパン」がアカウント連携、実現する高度なマーケティングの姿

「LINE」「ヤフージャパン」がアカウント連携、実現する高度なマーケティングの姿

LINE、ヤフージャパン利用者向けに届いたアカウント連携の連絡画面

LINEヤフーが対話アプリケーション「LINE」、ポータルサイト「ヤフージャパン」のアカウント連携を始めた。2024年度にはスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」のアカウントも連携する。国内最大級の各サービスを利用する1億超の膨大なユーザー情報を活用。企業がLINE公式アカウントを軸に顧客の好みや生活スタイルに合った高度なマーケティングを行えるようにする。(編集委員・水嶋真人)

「今回の統合を機にLINE、ヤフーのプロダクトをつなげ、ユーザーとビジネスをより強固につなげるプラットフォーム(基盤)を作る」―。LINEヤフーの二木祥平上級執行役員は、ヤフーニュースなどの自社メディア群、企業の集客・販促や顧客情報管理(CRM)を支援する各種サービスをLINE公式アカウントを中心に再構築する「コネクトワン構想」の狙いをこう説明する。

6月末時点でLINEは月間アクティブユーザー数9500万を誇る。ヤフージャパンも月間ログインユーザー5430万を持つ。計1億を超えるユーザーの行動がつながったアカウントは膨大なデータを生み出す。ビジネスソリューションも共通の企業アカウントに統合することでLINE、ヤフー、ペイペイをまたいだ横断的な利用が可能となり、「ユーザーに対してフルパネルでアプローチできる」(二木上級執行役員)基盤を整備する。

具体的には、ファッションが大好きなAさんに対し、アパレル会社のLINE公式アカウントへの友だち追加で10%のペイペイポイントがもらえる広告をLINE上に出す。友だち追加を行ったAさんはLINEのチャット画面で取得した10%ポイント還元クーポンを使い、店舗でペイペイを使って洋服を購入する。

これにより、企業とユーザーとの関係性を数値化した「エンゲージメントスコア」にオフラインの購買データも反映。これらのデータを基に前回買った洋服と合う商品の購入を促す広告をヤフージャパンに掲載する。

その広告をAさんがクリックし、ヤフーショッピングで商品をオンラインで購入。エンゲージメントスコアが増えたAさんに有料会員制度を紹介し、LINE公式アカウント経由で会員限定のファミリーセールに招待すれば特別感が高まる。過去の購買データを基にAさんからの問い合わせにも的確な回答を出せる。

LINEヤフーのビジネスカンファレンスで講演した二木上級執行役員

LINEヤフーはユーザーアカウントの連携に続き、24年にもLINEやヤフーなどが持つユーザーデータを横断して蓄積できるようにする。25年以降には人工知能(AI)でCRMを制御可能にする計画。

二木上級執行役員はコネクトワン構想の利点について「つながり続けられるからこそ、ユーザーの理解が深まり、LTV(顧客生涯価値)が高まる。使えば使うほどユーザーがストック(蓄積)され、キャンペーンの効果も上がる」と話す。この利点をユーザーと企業の双方で実感できることが、LINEとヤフーの統合効果を示すことになる。

日刊工業新聞 2023年10月24日

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