ZホールディングスとLINEが経営統合、海外大手企業に挑む川辺ZHD社長の戦略は
総合力で「GAFA対抗」
Zホールディングス(HD)とLINEの経営統合が1日、完了した。電子商取引(EC)や広告、金融といった領域を拡充し、海外展開も強化して2023年度に売上高2兆円、営業利益2250億円を目指す。ただインターネット関連分野では米IT大手4社のGAFAをはじめとする海外勢の存在感が大きい。ZHDは差別化に向けて人工知能(AI)に力を注ぐ考えだが、どれだけ早く統合効果を発揮できるか試される。(斎藤弘和)
「3年で数千億円上げるのは非常に挑戦的だ」。川辺健太郎ZHD社長は同日の会見で売上高についてこう述べ、23年度の目標は高いと認めた。ZHDの21年3月期売上高見通しは1兆1400億円。LINEの19年12月期売上高は2274億円だった。ポータルサイト「ヤフー」と対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」の相互送客などで利点を見込むが、相乗効果を早く発揮できるかが課題となる。
川辺社長が当面の成長株と位置づけるのは国内のEC事業や広告事業だ。例えばECでは、オンライン店舗と実店舗の商品データを連係させて、消費者が自分に合った購入手段を選べるようにする枠組みの強化を図る。
また、中長期的にはフィンテック(金融とITの融合)の収益貢献も見込む。スマートフォン決済に関しては22年4月に国内の「LINEペイ」を「ペイペイ」に統合するための協議を開始した。海外向けLINEペイは引き続きアジア主要国での拡充を目指す。
ただ世界では、GAFAや、中国IT大手3社のBATが権勢を振るう。川辺ZHD社長はこの点について「我々が優れている点は、グループの守備範囲の広さ。親会社も入れると携帯電話サービスまでやっている」と語った。GAFAは一つの商材に特化して大きくなった会社が多いことが念頭にある。
今回の経営統合に伴い、ソフトバンクと韓国ネイバーが折半出資する「Aホールディングス」が発足した。AHDは戦略的持ち株会社としてZHDの株式を65・3%保有。ZHDの傘下に、事業会社であるヤフーとLINEが置かれている。こうした総合力を生かせるかが焦点となる。
またZHDは差別化に向けて、AI技術にも力を注ぐ方針。21年度からの5年間で5000億円のAI関連投資を行い、AI人材は5000人増員する計画を示した。新たな挑戦を成功させて自社の魅力を高め、優秀な人材を集める好循環を実現できるか試される。