動物の臓器を人間に移植…「異種移植」実現に一歩、ポル・メド・テックが米社と協業
ポル・メド・テック(川崎市多摩区、三輪玄二郎代表取締役社長)は米国の企業と協業して、2024年初めにも動物の臓器を人間に移植する「異種移植」向けのドナー豚の生産を始める。国内では腎臓や肝臓などの臓器移植を待つ患者は多い。異種移植は技術的な課題はあるが、臓器不足を解決する方法として期待される。
ポル・メド・テックは明治大学農学部生命科学科の長嶋比呂志教授の研究成果を活用したスタートアップ。クローン豚の作成やモジュール式の飼育デバイスなどに強みを持つ。 米国のスタートアップ、eGenesis(イー・ジェネシス)が遺伝子改変を施した臓器移植用の豚の細胞を使う。ポル・メド・テックはドナー(提供者)細胞と同じ遺伝情報の複製(クローン)動物を作る「体細胞クローン技術」を活用して、早ければ24年初めにも豚の生産を開始する。同社のモジュール式の飼育デバイスも活用することで、従来よりも飼育コストを抑えることも目指す。
移植する臓器は、腎臓や肝臓、膵島(すいとう)などを想定する。今後はサルなどで試験を行い、医療機関と協力して、臨床研究につなげたい考えだ。
臓器不足は深刻だ。日本臓器移植ネットワークによれば、22年末時点で日本で臓器移植を希望するのは約1万6000人いる。異種移植はこうした課題を解決できるとして研究が進められてきた。一方、豚の持つ遺伝子やウイルスが人間の体内に入ってくると、拒絶反応が起きるといった課題があった。近年ではゲノム編集などのバイオ技術を使い、拒絶反応を抑える研究が進んでいる。
日刊工業新聞 2023年10月17日