世界初!バイオ3Dプリンターでヒト細胞由来の人工血管を移植

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細胞だけで構成した長さ約7cm、外径6mmの人工血管(佐賀大提供)

ヒト細胞由来“人工血管”作製

佐賀大学医学部付属再生医学研究センター長の中山功一教授らは、細胞専用のバイオ3Dプリンターを独自開発し、作製したヒト細胞由来の人工血管をヒトに移植する世界で初めてとなる臨床研究を開始した。現在、バイオ3Dプリンターを使った新しい治療法を適切で安全に提供できるように研究を重ねている。取り組みや今後の課題などを中山教授に聞いた。(山谷逸平)

―バイオ3Dプリンターの特徴は。

「生きた細胞を数万個集めて直径約0・5ミリメートル程度の塊とし、直径約0・1ミリメートルの針が生け花の剣山のように並んだ特殊なデバイスに刺す“剣山メソッド”を取り入れた。隣との隙間が近いとくっつき、遠いとくっつかないという生きた細胞の性質を生かせる。同機は液体充填システムの渋谷工業、再生医療など製品開発・製造のサイフューズ(東京都文京区)と共同開発し、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)のクリーンルーム内に置いている」

―何が作れますか。

「針の刺す位置を円形にすれば中空形状の構造体が造れる。プリント直後は表面がトウモロコシの粒々のようにみえるが数日経つとくっつきあう。針を抜くと細胞自体がコラーゲンを出して弾力性のある構造体ができあがる。連結すると長いチューブも可能だ」

―どんな用途を想定していますか。

「塊に血管内皮細胞などを最初に混ぜ込めば正常の血管と同じような組織ができあがる。ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の肝臓や心臓の細胞を混和した塊などでも同様に可能だ。ミニ臓器としても機能するため、薬の毒性試験用途での研究も進めている」

―取り組み状況と課題を教えて下さい。

「人工透析患者の動脈と静脈をバイパスする人工血管として、患者自身の皮膚細胞から作り、1人目の移植に成功した。移植は2例残っている。半年間で安全性をみたい。細胞製人工細胞の作製にはプリントしてから成熟するのに数週間かかっている。今後はより早く移植できる手法などを開発していきたい」

日刊工業新聞2020年11月5日

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