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工場設備移設を仮想空間で検証、アイシンが子会社に展開

工場設備移設を仮想空間で検証、アイシンが子会社に展開

工場をデータ化するナビビズの機器類

問題を事前把握、生産最適化

アイシンは自社工場の設備や通路の配置を仮想空間上に再現し、設備移設の事前検証などに役立てる取り組みを子会社にも拡大する。9月末にブレーキ事業子会社のアドヴィックス(愛知県刈谷市)で試験導入した。アイシン本体では国内主要19工場を仮想空間上に再現済みで、要望に応じて他の子会社にも展開する。移設した設備が周辺設備とぶつかるといった問題を仮想空間で事前に把握できるようにし、生産技術担当者らによる実地検証の移動時間や作業の手戻り削減につなげる。

アイシンは生産現場を3次元(3D)モデル化し仮想空間上に再現する活動を「ファクトリービュー」の名称で運用している。パソコンなどで仮想空間にアクセスし工場内を移動することが可能。空間を指定して文字情報を共有したり、天井から地面までの距離や設備の設置面積などを計測する機能を持つ。

設備移設時の検証作業では、移設対象の設備が柱や消火設備、マンホール、通信機器に接触しないかなどを事前にシミュレーションできる。

3Dモデル化の作業では独ナビビズ(ミュンヘン)のITツールを活用。同ツールを装着した作業者が工場内を歩き回ることで、3Dモデル化に必要な画像と点群データを同時に取得する。

アイシンでは国内19工場に加え、米ノースカロライナ州や同テキサス州の拠点のデータ化も完了。今後は仮想空間上で既存設備と新設備を連動させたり、生産計画と結び付けて生産を最適化したりするなど、より高度な「産業用メタバース」としてのデータ活用も視野に入れる。

フィンランドのノキアと英アーンスト・アンド・ヤング(EY)が日米欧など6カ国の企業を対象に実施し6月に公表した調査結果によると、企業用・産業用メタバース未導入企業の94%が「今後2年以内にメタバースを始める予定」と回答。導入済みの企業では設備投資費の削減や持続可能性の向上、安全性向上といったメリットが上位に入り、従業員の育成・訓練での活用に期待する声も多かった。日本の場合、試験的なものも含めて導入済みの企業(49%)と未導入の企業(51%)がほぼ半々の状況にあり、市場拡大の余地は大きいと言えそうだ。


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日刊工業新聞 2023年10月13日

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