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メタバースで取引先に製品紹介…日立GLS・三菱電機、家電各社が語る利点

メタバースで取引先に製品紹介…日立GLS・三菱電機、家電各社が語る利点

日立GLSの仮想空間では動画などを通じて製品に関する知識を得られる(同社提供)

大手家電メーカーで社外向けのメタバース(仮想空間)の活用が本格化してきた。空調設備や照明機器のほか、洗濯乾燥機や電子レンジといった製品を取引先に説明する際などに用いる。仮想空間には移動距離や時間の制約がないため、利用者は容易に説明会に参加可能。複数製品の使い方をまとめて理解しやすい特徴もある。家電各社は、実機を直接見ることができないデメリットを上回る利点を追求する。(阿部未沙子)

「一度に多くの方が参加していただけることが(仮想空間の)最大のメリット」―。こう語るのは、日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS、東京都港区)の大隅英貴社長だ。同社は2022年11月に初めて仮想空間を活用した製品説明会を開催。家電量販店の社員を対象に実施した。パソコン(PC)などを通じ、約6000人が日立GLSの製品について担当者から講義を受けたり、ビデオ通話で質疑応答をしたりしたという。

家電量販店をはじめとする法人向けの製品説明会は、主要都市での開催に限られてしまいがちだ。そのため、地方で働く人にとっては移動時間がかかり、仕事を休まなければならないこともあった。

仮想空間はこうした課題を解決する。日立GLSは23年8月、新製品に限定した研修会を開催。22年11月の成果を踏まえ、家電量販店以外の卸売業者にも対象を広げた。8月1日―3日の参加者は目標としていた3000人を超えた。

今後は11月ごろにも仮想空間で製品説明会を開催する予定だという。新製品に限定せず、全ての製品を説明の対象とする考え。24年も開く方針で、仮想空間を活用した製品説明に継続して取り組む構えだ。

法人向けの提案ツールとして仮想空間の活用を計画する企業もある。三菱電機は物件オーナーや設計事務所、ゼネコンなどの建設・不動産業界に、営業担当者が照明機器や空調設備を提案する際に用いる方針だ。

仮想空間の利用者は仮想現実(VR)ゴーグルを着用し、アバター(分身)として参加する。分身は照明や空調設備をアクセサリーとして身に付けた姿にするなど、遊び心を取り入れた。

三菱電機の仮想空間に登場するアバターは室外機や照明などを身に付けている(同社提供)

仮想空間では三菱電機の照明や空調設備が事務所内に設置されている。複数製品を一つの空間に配置したことで、空調と照明が連携する制御などを分かりやすく伝えることができ、「(顧客に)空間全体で提案する際に使える」(同社担当者)。例えばエアコンからの風の流れも可視化できる。

日立GLSと三菱電機に共通するのは、一度に複数製品の特徴を把握可能な点を強みとして仮想空間を利用している点だ。日立GLSの大隅社長は「いろいろな方(の事情)に合わせられる点でも、メタバースは意味がある」と指摘する。従業員の柔軟な働き方を加速できる可能性もある。


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日刊工業新聞 2023年月9月12日

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