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線状降水帯の発生頻度、平均気温4℃上昇で6割増える

気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官らは、地球温暖化が進行すると、線状降水帯の発生頻度や強度が増すことを高精度なシミュレーションで示した。平均温度が工業化以降2度C上昇した場合、線状降水帯の発生頻度は約1・3倍に、同4度Cすると約1・6倍に増えると予測された。台風に伴う大雨も増える。解析結果はデータ統合・解析システム(DIAS)を通じて公開し、極端気象に対する防災や温暖化適応策への活用を見込む。

日本全国における線状降水帯の年間発生数の頻度分布(気象庁提供)

「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」をもとに、全国を網羅した多数の高解像度気候予測シミュレーションを実施し、大雨の将来変化を評価した。

その結果、線状降水帯の頻度増加と強化が示された。広範囲で10年に2回以上発生し、4度C上昇実験では全国で年間60回超発生する年もあった。

また、50年に1度程度の大雨の降水量も全国的に増加し、増加率が40%を超える場所もあった。従来は降水量の少ない北海道で特に増加率が高く、対策が求められる。

台風については、10年に1度程度の大雨の降水量が増加すると示された。梅雨でも数十年に1度規模の大雨が全国でさらに増える。

狭い範囲での線状降水帯や複雑地形での大雨はこれまで再現できなかった。今回、のべ720年分のデータを用いてd4PDFを20キロメートルから5キロメートルメッシュに高解像度化することで検出可能となり、再現性も向上した。

気象業務支援センター、海洋研究開発機構京都大学、北海道大学、寒地土木研究所との共同研究。

日刊工業新聞 2023年09月21日

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