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全世界の洪水被害を予測するハザードマップ、MS&ADが無償公開する背景

全世界の洪水被害を予測するハザードマップ、MS&ADが無償公開する背景

将来洪水ハザードマップが予測したインドの洪水リスク。画面中央の地域では5メートルの浸水が見込まれる

MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、地球温暖化が進行した全世界の洪水被害を予測できる「将来洪水ハザードマップ」を9月上旬に無償公開する。アジアの一部地域に限定して4月から無償公開していたが、自社や取引先の水害リスクを知りたい企業や金融機関からの問い合わせが多く、公開範囲を全世界に広げた。被害を回避したい企業による工場立地の検討や情報開示での活用を見込む。

将来洪水ハザードマップは、地形や降雨データを基に河川の流量も検証して洪水時の浸水の深さを表示する。MS&AD、東京大学生産技術研究所の山崎大准教授、芝浦工業大学の平林由希子教授、MS&ADインターリスク総研(東京都千代田区)の4者が共同開発した。

公開した無償版は現在と2080年時点を予測できる。温暖化対策がとられずに平均気温が産業革命よりも4度C上昇した世界を再現し、500メートル四方の浸水を予測する。現在、工場の近くに洪水発生の恐れがなくても、将来は水没の危険性が高いことなどが分かる。

有償版も機能を向上させた。世界各地を90メートル四方の範囲で予測できる。日本に限っては9倍の30メートル四方まで絞り込めるようにした。利用者は近隣での被害の違いまで分かる。また温暖化対策が講じられて2度Cの上昇に抑えた世界や30年時点と50年時点も検証できる。

MS&ADインターリスク総研が想定される被害額の算定まで含めたコンサルティングを提供する。世界各地で洪水が頻発しており、グローバル展開する企業ほど自社拠点や調達先が被災する恐れが高まっている。また上場企業は、気候変動による被害を予測して開示するように求められており、コンサルの需要を見込む。

日刊工業新聞 2023年08月30日

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