2035年全車EV化する「レクサス」の今後は?トヨタの社内カンパニープレジデントに聞いた
レクサス、35年全車EV化 脱炭素化へ行動変革
トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」で、2035年に新車販売の全てを電気自動車(EV)にする方針を掲げる。またこのほど、同年に車の製造から走行時の全段階で脱炭素化を目指す、新たな目標を明らかにした。トヨタでEVや脱炭素化の先駆者となるレクサスの方向性について、3月に就任した社内カンパニー「レクサスインターナショナル」の渡辺剛プレジデントに聞いた。
―市場をどう捉えていますか。
「大きな環境変化が起きていると実感している。その中でレクサスがやるべきは脱炭素化。その過程でレクサスが何をすべきか、行動や考え方を変革しなければならない。35年には再生可能エネルギーの利用拡大や再生材の採用なども含め、製造から販売での脱炭素化を実現したい」
「プレジデント就任以降、さまざまな地域の販売店トップや顧客らと会話しているが、車を使ってどう楽しむか、といった趣味性や嗜好(しこう)性が強まっている。新しい価値観に向けて何を提供できるか、ただ車を作るだけでなく議論から実行に移さねばならない」
―特にEV市場の中心地である中国は、変化への対応速度が求められます。
「2―3カ月たつと興味・関心が変わっているのが今の中国。中国市場はとても大きく、これまで同様に守っていかねばならない。レクサスはグローバルブランドとしてバランスの取れた商品開発が基本だったが、正直、中国ではこのやり方は通用しないと考えている。車づくりや商品開発をより中国にフォーカスしなければ、市場の変化に追従できない」
―現状、国内のみの開発体制を分ける方向ですか。
「そういうことも考えていかないといけない。必ずしも完成車輸出で企画を立てるだけでは足りないだろう」
―26年にプラットフォーム(車台)やソフトウエア基盤を刷新した次世代EVを、レクサスから投入予定です。
「EVという技術に対する潜在性や拡張性を、とても感じている。細部までのモノづくりや車としての乗り心地など、レクサスが持つブランドの味はどんな車の構造や作り方になっても継承し、進化させる部分だ。今までとは全く異なる構造にチャレンジすることになるが、全力で取り組まねばならない。『レクサスらしい』と感じてもらえるEVにしていきたい」
―車体構造を3分割にする生産方式「ギガキャスト」の影響は。
「型成形品による組み立ては効率的かつ、構造の自由度も大きく持てる。とても合理的だ。モジュール化した構造を接合して一つの車にする際の性能や強度、剛性などのバランスは難しい点だが、エンジニアとしては大変興味がある」
【記者の目/「新たな立ち位置」 確立に注目】
群馬工業高等専門学校を卒業後トヨタに入社し、車両開発責任者などを経てプレジデントに就いた。30年前の入社当時から「車両開発責任者になる」と決め、どう目標を実現できるか考え続けてきたという。市場競争が厳しくなる中、持ち前の信念でEVブランドとして新しい立ち位置を得るレクサスの存在感をどう確立し、けん引していくかが注目される。(編集委員・政年佐貴恵)
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