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最大市場で景気停滞感…電子部品の世界出荷額6.2%減

電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本メーカーによる2023年上期(1―6月)の電子部品世界出荷額は、前年同期比6・2%減の2兆245億円だった。スマートフォンをはじめとする民生機器分野の顧客が部品の在庫圧縮を進めた結果、実際の需要以上に出荷が落ち込んだ。スマホなどの顧客在庫の圧縮は6月までに一巡したものの、最大市場の中国で景気の停滞感が強まった結果、電子部品需要も回復せず、出荷が伸び悩んだ。

電子部品グローバル出荷

前年同期を下回ったのは上期としては3年ぶり。製品別に見ると、自動車やスマートフォンなどに幅広く使われるコンデンサーは前年同期比11・7%減の6746億円。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターは同9・9%減の1328億円だった。

電子部品の出荷額に占める海外向け比率は約8割と高く、海外の顧客との決済はドル建てが主流だ。為替の円安は円換算した際の売り上げを押し上げる。ただ23年1―6月は前年同期より3割以上円安が進んだにもかかわらず、出荷額はマイナスだった。

スマホやパソコンなど民生機器メーカーが積み増していた部品在庫の圧縮を加速し、電子部品メーカーの受注が実需以上に落ち込んだことが大きい。民生機器はコロナ禍の巣ごもり需要で一時的に販売が伸びたものの、その後は不振が続く。もともと少ない実需を下回る出荷が続き、円安のプラス効果を打ち消した。一部の電子部品メーカーは電気自動車(EV)メーカーの部品在庫見直しや汎用サーバーや半導体製造装置向け需要の落ち込みの影響も受けた。

民生機器の顧客の在庫調整は6月までにほぼ一巡したとみられる。ただ出荷額の3割超を占め、地域別では最大の中国では景気の停滞感が強まっており、スマホなど耐久消費財の需要も落ち込みが続いている。欧州でも物価高に賃上げが追いつかず、個人消費は弱い。このため顧客の在庫調整の終了後もスマホやパソコン向け電子部品の出荷は緩やかな増加にとどまり、前年の水準に戻らなかった。

足元では人工知能(AI)サーバー向けの需要が伸びているものの、市場はまだ小さく、汎用サーバー向け需要の回復は24年前半にずれ込むとの見方が強い。電子部品出荷の底打ちには、なお時間がかかりそうだ。


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日刊工業新聞 2023年月9月12日

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