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8社中5社が当期減益・1社は当期赤字…需要回復遅れる電子部品、経営陣が語った展望は?

8社中5社が当期減益・1社は当期赤字…需要回復遅れる電子部品、経営陣が語った展望は?

電子部品イメージ

電子部品8社の2023年4―6月期連結決算は5社が当期減益となり、1社が当期赤字に転落した。中国・欧米で景気の減速感が強まり、消費者の購買意欲が低迷。スマートフォンやパソコン(PC)、家電といった幅広い最終製品のニーズが減り、期初想定より部品需要の回復が遅れている。投資計画を見直す企業も出ており、成長戦略とキャッシュフロー確保のバランスをどう取るか、難しいかじ取りが続きそうだ。

電子部品8社

「需要回復に対して強いモメンタム(勢い)は感じていない」。村田製作所の中島規巨社長は、顧客からの部品需要についてこう話した。大手8社の23年4―6月期連結営業利益の合計は前年同期比約31・6%減の1794億円で、マイナス幅は1―3月期の同約78・5%減より縮小した。ただ、需要回復スピードは各社の当初予想よりも遅れている。TDKは24年3月期の営業利益を期初は増益と予想していたが、今回、前期比11・2%減の1500億円に下方修正した。

各社の調べでは、スマホやノートPCメーカーの部品在庫削減は順調に進捗(しんちょく)している。それでも部品需要の回復が当初想定ほど進んでいない背景には、景況感の悪化による最終製品の需要回復の遅れがある。

本来、在宅勤務用途の民生品について見込まれていた、巣ごもり特需による反動減からの需要回復が想定より緩やかになっている。TDKは24年3月期のノートPC需要を前期比6%減の約1億6900万台に下方修正した。期初予想は同2%増の約1億8200万台だった。

米IT大手の業績悪化に伴うデータセンター(DC)投資抑制も響く。太陽誘電の福田智光取締役常務執行役員はDC向けなどを含む情報インフラや産業機器市場について「第1四半期から第2四半期の半ばぐらいまでは在庫調整で、年央ぐらいから立ち上がると見ていたが、在庫調整の期間が従来想定よりもやや伸びている」と話した。

産業機器向け部品も需要が落ちている。オムロンの竹田誠治執行役員常務は制御機器や電子部品について「需要が消失したわけではなく、下期からは緩やかに回復する」としつつ、「半導体や電気自動車(EV)の電池の設備投資需要が弱い。期初の想定を下回っている」と話す。

部品需要の回復が想定より遅いことを踏まえ、投資計画を見直すメーカーも出てきている。TDKは期初時点で2600億円を予定していた24年3月期の設備投資を今回、2400億円に下方修正。発表済みの案件を除く二次電池や受動部品の投資も見直しているという。京セラも投資額は変更しないものの、ファインセラミック製品や電子部品を中心に、需要状況に応じて一部設備投資を第2四半期以降へ延期する。


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日刊工業新聞 2023年月8月8日

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