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AWSのイベントが“リケジョ”養成プロジェクトに見る悩ましい面

AWSのイベントが“リケジョ”養成プロジェクトに見る悩ましい面

理系女性社員らの話に耳を傾ける福井県の女子高生

「ITといっても、私はお客さまの課題を技術で解決する、会話しながらの仕事です」。情報科学を専攻してもコードやプログラミングの作成に限らず活躍できる―。そんな先輩理系女性の言葉に福井県内約30人の女子高生が耳を傾けた。これは福井県教育委員会が主催する「ふくいGirls未来のテックリーダー」プロジェクトの1コマだ。女子高生らはアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン、東京都目黒区)を訪問し、若手社員によるパネルディスカッションや職場見学で理解を深めた。

福井県は47都道府県別の4年制大学進学率(2021年度調査)で11位。工学分野に進学する割合は15・4%で全国6位だ。ただし男子5位に対し女子は24位で、差が生まれていることがプロジェクトの背景にある。

同プロジェクトでは首都圏研修を皮切りに、地元の永和システムマネジメント(福井市)で12月にかけて簡単な人工知能(AI)チャット作成のゼミを実施。福井大学も協力する。財源に企業版ふるさと納税を活用し、24年度はさらに規模を拡大する計画だ。

日刊工業新聞 2023年08月10日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
実をいうとAWSでのイベントは、リケジョ育成という目的では悩ましい面がある、と私は感じた。パネルディスカッションに登壇した若手は男女×文理の4人。多様なメンバーを選んだのだと思うが、女子高生には「文系でも、こんな世界トップクラスのIT企業で活躍できるんだ」という印象を与えた雰囲気があるためだ。もちろん政府や大学は、「文系でも女性でも、データサイエンスやITの学びや就職を進めてほしい」と思っている。しかし、「なるべくなら(可能な限り)、高校で数学をしっかり学んで理工系に進学した上で、高度なITやDXを強みとするイノベーション人材になってほしい。理系人材が文系分野で活躍する選択肢の方が、逆よりもずっと多いのだから」というのが、真の思いなのだ。若い世代へメッセージが正しく伝わるよう、気をつけなくてはいけない点だといえそうだ。

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