パナソニックの美容家電、高価格でも受け入れられた理由
新型コロナウイルスの感染拡大で消費者の外出が減少した中、ニーズが高まったものの一つが美容家電だ。従来、店舗でサービスを受けていたエステなどの美容を自宅で行いたい需要が増えたためだ。パナソニックは理美容事業としてさまざまな製品を市場に投入してきたが、緊急事態宣言が発令された2020年以降も出荷ペースが落ちず、堅調に販売を伸ばしてきた。
同社は22年度、コロナ禍を踏まえ、美容クリニックから学んだ技術を生かした製品など高付加価値製品を連続的に投入するとともに、技術力の発信を強めてブランド力の向上を図った。
例えば美顔器の領域では、エステでの手の施術の代わりとして、皮膚を引き上げるように動かすリフトケア専用の「バイタリフト」シリーズが好調に推移。22年には新製品として、目元や口元を手入れしやすい小型の「バイタリフトかっさ」も投入した。さらに日常的な肌の手入れをより本格的にしたいという需要を満たすため、光の照射による美顔器「フォトブライトショット」も同年に発売。皮膚科専門医の監修を受け、そばかすや色素沈着などの治療に使われるインテンス・パルス・ライト(IPL)と赤色発光ダイオード(LED)を搭載し、角質くすみを取れやすくした。
ビューティブランドマネジメント部の神本暁部長は「顔に触れられるのを避けたいなど、接触機会の減少のニーズがあり、エステに代わる需要を取り込んだ」と美顔器の販売が伸びた背景を分析する。機能を追求することで、6万―7万円の比較的高価格の製品も受け入れられた。
同年にフルモデルチェンジしたドライヤー「ナノケア」最上位機種も反響があったという。より日常的な美容家電として、髪を傷めないよう保湿しながら手早く乾燥できる機能を維持しつつ、小型化・軽量化を追求。エステ同様に美容室に行く回数を減らしたいニーズもあったことに加え、「マスク着用で顔の一部が隠れた状態だと、髪に目が行きやすいと気にする人が多かった」(巽敦子主務)。
23年5月の新型コロナウイルス感染症の5類への変更を受け、マスク非着用や外出の機会が増加するなど、社会環境が大きく変化した。ただ、神本部長は「環境変化は追い風になる」とみる。顔を出す機会が増えたことで、消費者の美容意識が一層向上している。引き続き高機能・高付加価値を追求していく考えだ。(編集委員・安藤光恵)
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