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「意思を持ったフォロワー」…マツダ社長が語るEVシフトの考え方

マツダは電気自動車(EV)の専用車種を本格投入するため、主力市場の北米における車載電池の調達やEV完成車工場への投資を2028年以降に始める見通しだ。電池調達先について毛籠勝弘マツダ社長は、交渉中のパナソニックが「北米のパートナーとしては有力」とする。28年以降とするEV本格投入は国内他社より2―3年遅い計画だが、自社を「意思を持ったフォロワー」(毛籠社長)と位置付け、技術を蓄積しながらサプライチェーン(供給網)を構築し、一定の時間をかけてEVシフトを進める考えだ。

マツダが現在、市場投入しているEVは日米欧に投入した「MX―30」と中国向けの「CX―30」のみ。主力は内燃機関車が中心で、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)も展開を増やしている。EVは25年からグローバルに市場投入を始める。さらに開発中のEV専用車種を26年以降に先行投入し、28年以降に本格投入する計画だ。

マツダが主力とする北米市場は、米国が北米で組み立てた車や電池でなければEVなど環境対応車の減税を受けられない制度を導入している。マツダはEVの本格投入までに現地での電池調達とEV生産体制を構築したい考えだ。

独自ブランドで変革期突破 中国市場、EV柱に反転/社長・毛籠勝弘氏

自動車業界はカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現や電動化対応など、大きな変革期に直面している。マツダは30年に向け、独自のブランド価値をつくりながら“スモールプレーヤー”として変革期を乗り越えていく戦略。6月に就任した毛籠社長に電動化やサプライチェーン構築の方針などを聞いた。 (編集委員・錦織承平)

―電動化は各地域でどう取り組みますか。
「電動化の進展は地域ごとにかなり差がある。中国は電動化一直線で間違いない。欧州もある程度進む。米国は州によって速度が違い、不透明さがある。当社は米国で25年ごろから、どんどんバッテリーEVを出すことはない。競争上で大事なのは、自社開発するEV専用プラットフォームと電気/電子アーキテクチャーだ。電気/電子アーキテクチャーはトヨタ自動車と一緒に取り組む開発のタイミングを見て(投入の)照準を合わせる」

―中国は過当競争になっているが勝算は。
「中国はすでに知能化の競争に入っている。(競争に負けて)落ちていく会社が多いだろう。EVを(買うと決めて)入ってくる顧客が多く、内燃機関車やHVだけでは顧客が取れないので、パートナーの技術を使ったEVを柱にビジネスを反転させていく。内燃機関車の価格下落はある程度続く想定で、足元の採算は非常に厳しくなるだろう」

―EVの車体部品を一括鋳造する「ギガキャスト」に取り組むつもりは。
「何が効率化できて、どんなデメリットがあるのか整理できており、技術開発すればできると思う。ただ、全体的な投資効率を考えると、数量が上がるまでは混流ラインでやるべきで、そこに導入するのがいいのか疑問だ。マツダではすぐに入れる必要性はない」

社長・毛籠勝弘氏

―欧州に投入したロータリーエンジン搭載のPHVの国内投入時期は。
「最終決定していない。まず欧州の反応を見たい。発電機としての量産は初めてなので、市場を広げるより品質や顧客の評判を確認するのが大事だ」

―30年に向けてサプライチェーンのティア(階層)を浅くする方針です。
「東日本大震災や昨今の半導体調達で困ったのは、コストを安くするために(調達先の)ティアが五つ、六つに深くなると、ボトルネックが見えなくなることだ。輸送に伴う二酸化炭素(CO2)排出が増え、販管費が増える、サプライヤーの在庫も増えてコストに乗ってくる。見えないコストをあぶり出し、取っていく。不要な仕様を生まず、在庫を持たせない、金型もできるだけ減らすようにして、全体が早く回るようにサプライチェーンを作り直す。サプライヤーの経営が楽になり、コストにも跳ね返ってくる」

―車の楽しさを体感できるイベントなどを事業化するとのことです。
「米国にはモータースポーツを中心に家族で楽しめる空間や文化があり、素晴らしい。日本にも作っていきたい。別法人を設立し、早く顧客に対応できる組織にしたい。速やかに取り組みたい」

日刊工業新聞 2023年07月17日

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