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大きさ200分の1、測定時間150倍速い!東芝が混合ガス濃度を即時測定するセンサー開発

大きさ200分の1、測定時間150倍速い!東芝が混合ガス濃度を即時測定するセンサー開発

東芝が試作したセンサーモジュール。手のひらに乗る程度の大きさに抑えた

東芝が、工場から排出される二酸化炭素(CO2)など3種類以上の混合ガスの濃度を実環境で即時に測定できる技術を開発した。従来の装置と比べて大きさは200分の1以下に小型化が可能な上、測定時間も150倍以上速くなるという。温室効果ガス(GHG)の排出量をガスごとに直接測定でき、より信頼性の高いデータを取得できる。今後も実証実験などを継続し、2026年をめどに実用化を目指す。(編集委員・小川淳)

東芝の独自の微小電気機械システム(MEMS)技術を応用し、超小型チップ上に新型の熱伝導型のガスセンサーを一括して形成した。マイクロヒーターでメンブレン(膜)を局所加熱し、ガスの熱伝導率の変化(熱の奪いやすさ)によるメンブレンの温度変化によってガスを測定する。例えば熱伝導率は水素は高いが、CO2は低い。こうした性質を利用する。

ガス反応膜を使わないため、被毒性の高いガスへの耐性も持つ。さらに基準とするガスと熱伝導率が異なれば「どんなガスでも測定が可能」(東芝)だという。

従来の熱伝導型ガスセンサーでは2種類のガスの測定はできたものの、3種類以上は困難だった。

そこで新しいセンサーでは異なる感度の素子を二つ用いて温度変化の違いを見ることで周囲のガス濃度を推定する。「センサーの各出力とそれぞれの事前検量線の逆関数から、アルゴリズム(計算手順)でガス濃度を求めるようにした」(研究開発センター先端デバイス研究所の山崎宏明エキスパート)。これにより3種類以上の混合ガスの各濃度を測定することを可能にした。

実験ではCO2、水素、炭素の混合ガスからそれぞれのガス濃度を同時に測定したところ、1・7秒しか要さなかった。従来は5分かかっていたという。「実環境においてリアルタイムで3種類以上のガス濃度を測定できたのは世界で初」(東芝)だとしている。

これまで、混合ガス中のガス濃度の測定には、ガスを分離カラムを用いて分析するガスクロマトグラフィー装置を使うのが一般的だった。しかし、測定に時間がかかるため、リアルタイムでは難しかった。

製品やサービスの原材料調達から流通、廃棄やリサイクルまでのライフサイクル全体でのCO2の総排出量である「カーボンフットプリント」の表示が企業に求められているが、今回の技術を使えば信頼性の高いデータの取得につながる。また、CO2から炭素を製造する「P2C」などCO2の資源化技術の高効率化への貢献も期待できる。

さらにこの技術を単体ガスの測定に応用すれば、水素漏えいの検知や屋内空気質のモニタリングなどにも応用可能だという。東芝は今後、センサーの構造やアルゴリズムの最適化に取り組み、実用化につなげる。


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日刊工業新聞 2023年07月19日

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