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営業車のEV化、障壁は充電スタンドと〇〇の少なさ

営業車のEV化、障壁は充電スタンドと〇〇の少なさ

アストラゼネカのMRが利用するEV「リーフ」

営業車の脱炭素化に向けた課題が明らかになってきた。製薬大手の英アストラゼネカの日本法人は営業車に850台の電気自動車(EV)を導入した。国内でトップ級の台数だが、さらなる拡大には車種や充電スタンドの少なさが障壁となっている。事業活動全体の脱炭素化には、二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション車(ZEV)の普及が欠かせず、政府にも対応が求められる。

アストラゼネカは2020年1月、30年までにカーボンネガティブ(温室効果ガスの排出量よりも吸収量が多い状態)を目指すと発表した。通過点として25年までに事業活動と関連したCO2排出量をゼロにする目標を掲げ、全世界の営業車の電動化を進めている。

日本法人も20年、全拠点の使用電力を再生可能エネルギー化し、EV導入も加速させてきた。22年末までに1854台の社用車のうち、850台をEVに更新した。順調のようだが、いくつかの課題に突き当たっている。

日本車、「リーフ」のみ

一つが日本製の車種の少なさだ。リース車両の更新に合わせて導入するEVは、日産自動車「リーフ」の1車種のみ。海外メーカーはEVの車種が豊富だが、国内での修理・保守体制を考えて日本メーカーを優先するとリーフ以外の選択肢がない。

中でも、雪道を安定走行できる4輪駆動車(4WD)がないのが悩みだ。EV化できていない車両の多くが、豪雪地のMR(医薬情報担当者)が運転する400台だ。現在、試験的にSUBARUの4WD車8台を導入している。

地方、長距離移動不安

車両運用を担当するアストラゼネカ総務部の岩本公秀部長は「充電スタンドも少ない」と課題を挙げる。外回りの社員にとって充電切れは気になる。地方では1日の走行距離が200キロ―300キロメートルとなるため、充電スタンドが少ないと長距離移動に不安がつきまとう。

同社の社員は取引先との直行直帰が基本なので、帰宅後に自宅で充電できれば効率的だ。ただし、持ち家だとEV専用充電器を取り付けやすいが、賃貸や集合住宅だと設置が難しい。

補助金も課題だ。直行直帰のMRは、近所に駐車場を借りている。この場合、リース車両でも社員が車両登録をするため、補助金の申請には社員の源泉徴収票が必要となる。アストラゼネカとの雇用関係を証明するためだ。新入社員や中途採用、派遣社員は申請できず、補助金によるリース代の減免が受けられない。また、補助金が適用された車両は利用者の変更も制限される。

アストラゼネカのように社員が直行直帰で営業車を利用する企業は少なくない。高額なEVの普及を考えると、補助金に柔軟な制度が求められそうだ。

普及へ環境整備 企業、政府に目標設定要望

すべての車両のEV化を目指す国際的な企業連合「EV100」があり、日本からNTTや東京電力ホールディングス(HD)、ニチコンなど7社が参加する。世界ではアストラゼネカを含む121社が参加しており、日本企業は少数だ。EV100の報告書によると121社は合計20万台のEVを運用しており、仏電力会社EDFグループが6331台、スイスポストが5865台を保有する。日本の7社は合計でも1500台弱にとどまる。この報告書でも車種や充電スタンドの少なさを普及の障壁として指摘している。

EV100に加盟していない日本企業も商業車両の電動化を模索するが、同様の課題を抱えている。そこで企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」は6月、政府に対してEVを含むZEVの新車販売目標の設定を求めた。政府の方針が明確であると自動車メーカーも開発戦略を立てやすく、車種が増えるためだ。ほかにも充電スタンド普及や規制緩和も要望した。JCLPに参加するアストラゼネカの光武裕ジャパンサステナビリティディレクターは「同じ悩みを持つ企業との行動は心強い」とし、他社と連携してEVを導入しやすい環境整備を働きかけていく。

日刊工業新聞 2023年07月14日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
商用車にEVを導入したいけどできないという悩みを抱えた企業が増えています。工務店から軽トラックの電動車がない、という声も聞いたことがあります。EVへのニーズが高まっており自動車メーカーにはビジネスチャンスです。少し前まで、再生可能エネルギーをたくさん購入したいけどできないという企業も多かったです。JCLPを中心に政府に働きかけ、非化石証書の価格低減などを実現してきました。EVを求める企業の声も、政府などに届いてほしいです。

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