静電容量は最大5割増…日本ケミコンがアルミ電解コンデンサー開発
日本ケミコンは蓄えられる電気の量(静電容量)が大きいアルミ電解コンデンサーを開発した。電源回路に使う基板自立形のアルミ電解コンデンサーのシリーズに、同じ体積当たりの静電容量が最大で従来比50%大きく、長さも従来品を上回るタイプを追加。チップ形の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーにも体積当たりの静電容量が最大で同40%大きいタイプを加えた。データセンター(DC)のサーバー向けなどで強まる高容量化の要望に応える。
電源回路などに用いる日本ケミコンの基板自立形アルミ電解コンデンサー「KHU」と「LHU」の両シリーズに、コンデンサーの特性に問題ない範囲で一度に流せる電圧である定格電圧の範囲が400―450ボルトで、長さが65ミリ―80ミリメートルのタイプを新たに標準品に追加した。従来は60ミリメートルが最大だった。
同じサイズの同社従来品と比べた場合、静電容量は40―50%大きい。摂氏105度Cで使用の場合の寿命は3000―5000時間と、同じ条件で2000時間の従来品より長い。特殊加工をした自社開発のアルミ箔を陰極に採用し、コンデンサー内部の圧力を低減することで実現した。
DCのサーバー用電源などでの採用を見込む。停電時にもサーバーに電力を供給してデータを守るため、近年のサーバー電源は高出力が求められる傾向にある。必要な静電容量も増加しており、サイズが大きく高容量なアルミ電解コンデンサー需要が増えていることに対応する。ケミコン東日本の福島工場(福島県矢吹町)で10月から量産を開始し、早期に月2万個の生産を目指す。
また、チップ形の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサー「PXGシリーズ」でも高容量化を図る。定格電圧25ボルト品に、同サイズの従来品より静電容量が20―40%高いタイプを追加した。
材料のアルミ箔に開ける穴を細かくするほど箔の面積が広がり容量も上がるものの、電気を通すためのポリマーを入れることが難しくなる課題があった。日本ケミコンは今回、製造工程を工夫することで、細かい穴に均一にポリマーを入れることに成功した。
サーバーのほか、パソコン内部の電源などでの使用を想定。電源の小型化や省スペース化に寄与する。ケミコン東日本の宮城工場(宮城県大崎市)で量産を始めており、2023年度中に月100万個の生産を計画する。