神戸製鋼が「機械事業」を成長の軸に位置づける理由
神戸製鋼所は脱炭素化や水素エネルギーへの転換で、機械事業を中長期の成長事業に位置付ける。キーワードは「協業」「ストックビジネス拡大」「生産性1・3倍」。圧縮機や熱交換器などを軸にグローバル展開とM&A(合併・買収)投資を加速する。2030年度に事業規模で23年度見込み比17・6%増の3000億円を目指す。鉄鋼、電力に次ぐ高収益ビジネスとして名実ともに存在感を高める考えだ。(編集委員・山中久仁昭)
「事業規模3000億円の実現に戦略的M&Aは不可欠。海外でストックビジネスを広げるため部品企業の買収も念頭にある」。6日、機械事業のリモート説明会で竹内正道副社長はこう強調した。
同社は鉄鋼大手の一角でありつつ、アルミ、電力、建機など事業が多角化する“複合企業”。機械事業の23年度の経常利益予想は190億円で、全社のうち約15%の確保を狙う。
機械事業の経常利益は前年度比32・9%増と高い伸びを見込む。同事業の投下資本利益率(ROIC)は22年度に9・6%と、全社目標の8%を上回った。
高収益の要因は複数挙げられる。スクリュー圧縮機や液化天然ガス(LNG)気化器など世界シェア首位級の商品を持つことが大きい。同社の培った熱・流体、駆動、音の制御や金属加工の技術を具現化している。
これまでM&Aを進め、インド、スウェーデン、中国など15カ国に34拠点を持ち海外売上高比率6割に及ぶ。
一度納入されると長くメンテナンス需要が見込めるストックビジネスの比率(現30%)を「海外で拡大する」(神鋼機械事業部門)。
さらにモノづくり現場の革新も注目される。非汎用製品で課題だった技の暗黙知や部分最適に対し、今回、デジタル技術の活用や設計・構造の標準化を通じた「生産性1・3倍」との変革目標を設定した。
鉄鋼、建機などに比べ顧客層が厚い機械事業は比較的安定した分野。23年度の連結受注高は2550億円程度で前年度比は2・3%増にとどまるが、高い収益率は魅力だ。同社は24―26年度の次期中期経営計画に、機械事業への経営資源を集中投入する方針。エネルギーなど既存顧客外の「新分野・新事業」で何をどう花開かせるかが成長のカギを握りそうだ。