営業員の収益目標を撤廃、みずほ証券が評価の基軸を切り替えた狙い
みずほ証券は2023年度から部支店や営業員の収益目標を撤廃し、評価の基軸を顧客評価に切り替えた。顧客からの評価を仕事の動機付けにすることで、顧客満足向上を目指す営業活動を徹底させる。営業員の能力をさらに高めるために研修体系を再構築するなど、営業活動の質も底上げする。顧客の立場で課題解決策をともに探し、提案する営業活動を浸透させる。これらの施策に注力し、預かり資産拡大などにつなげる。
顧客からの評価を取り入れるため、有価証券の売買時などにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてアンケートを実施する。顧客に取引報告書を送付する際、2次元コードから評価を入力できる仕組みも導入する。
顧客層ごとにアプローチを強化する。富裕層向けにコンサルティング(相談対応・助言)の力を高めるため、「コンサルティングアカデミー」と呼ぶ研修体系を構築した。金融市場や商品の知識や分析・提案力に加え、歴史や美術に関する知見や教養を身につける。入社1年目から役員までそれぞれの段階でコースを習得する。
店頭で接客する営業員は幅広い相談に対応できるようにする。この一環で、みずほ銀行の窓口からみずほ証券に紹介することで評価する仕組みを撤廃した。銀行、信託、証券がそれぞれのチャンネルで独立して対応する。
対面取引を望まない働く現役世代などにはプル型のチャンネルとしてコールセンターを活用する。24年から拡充される少額投資非課税制度(NISA)への対応は、業務提携先の楽天証券やPayPay証券との連携を強化し、若い世代の需要を取り込む考えだ。
インタビュー/米の債権・株式業務拡大・社長・浜本吉郎氏
みずほ証券の浜本吉郎社長に注力する分野や今後の展開を聞いた。
(編集委員・川口哲郎)―みずほフィナンシャルグループ(FG)は銀行、信託銀、証券の連携を深めています。証券の役割は。
「グローバルの観点では、顧客から見て銀・信・証の縦割りは関係ない。米国で投資銀行事業モデルを追求する中、企業同士の連携が出発点になる。M&A(合併・買収)助言業務を自前で伸ばそうとしてきたが、今後はみずほFGが買収したグリーンヒルの力を借りる。彼らのブランドは残し、業務運営も全面的に任せる」
―米国の株式業務が伸びる見立てですか。
「現在も米国の引き受け実績で20位内に入っており、今後は首位を目指せると思う。投資銀行の実績もトップ10入りを目指す。米国で債券から株式までフルラインで万全に対応できる体制を築き、欧州やアジアにも段階的に展開したい」
―国内は新NISAなどで個人の投資機運が高まる中、商機をどう捉えますか。
「能力や見識を高めるのと同様に重要なのが、国民の金融リテラシー向上だ。身の安全を守るために水泳を習うことと一緒で、子どもの頃から正しい金融知識を身に付けることが必要だ。我々も学校で授業を受け持つなどの活動を実施し、23年は22年の倍のペースだ。講師の派遣を通じて社員の働きがいにもつながっている」
―部門横断でスタートアップの支援に取り組んでいます。
「結果が出るまでに時間がかかるが、徐々に事例が出ている。新規株式公開(IPO)担当者は公開業務に偏りがちだが、部門横断で投資銀行部門が入り、M&Aや資産証券化など多様な提案ができるようになった。みずほを頼りにする顧客が増えてきている」
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