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楽天証券と資本提携したみずほ証券のグループ戦略

みずほ証券は2022年11月、楽天証券に議決権比率19・99%に当たる約800億円を出資した。みずほ証券はミドル・シニア層への対面営業に重点を置く一方、ネット証券のチャンネルが手薄なため、資本提携によって補完する狙いだ。「貯蓄から投資へ」の機運が高まる中、両社は提携の成果を早期に具現化できるか注目される。

みずほ証券の強みは対面営業の場で磨いた資産コンサルティング力やグループとして幅広いソリューション提供力だ。「(楽天証券の顧客が)人生の節目のタイミングで今後のライフプランやフィナンシャルプランをじっくり考えたいと思われた時、付加価値あるサービスを提供させて頂くチャンス」(みずほ証券)と捉える。

このような場面を想定し、両社間で効果的な提携の枠組みを構築するため、協議を重ねている。証券サービスのほかに相続や不動産などのニーズがあれば、みずほフィナンシャルグループとしてのコンサルティングサービスの提供も検討している。

楽天証券は楽天経済圏との連携や非金融とのシナジーを活用し、若年層や働く現役世代を中心に800万口座の顧客基盤を備える。ポイントを使った金融商品購入や投信積み立てのクレジットカード決済など、投資未経験者も取り組みやすいサービスで口座数を伸ばしてきた。

みずほ証券はスマートフォン専業のPayPay証券に49%出資し、若年層向けのチャンネルに位置付けている。楽天証券は総合的な金融商品を取り扱い、シニア層も含めて厚い顧客基盤を持つネット証券のオールラウンダーに対し、PayPay証券はスマホに特化し、商品も限定される。このため両社の顧客層は重複せず、すみ分けができるとみる。

みずほ証券はグループのみずほ銀行から証券向け顧客の紹介を受けるルートも活用し、いわば全方位で将来の主力顧客層を取り込む戦略だ。ネット取引の顧客を対面取引に引き込めるかが提携の成果を左右しそうだ。

日刊工業新聞 2023年01月26日

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