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最低賃金1000円超へ…物価上昇で大台の可能性

取引価格適正化など、産業別に労使連携カギ

2023年度の賃金の下限にあたる引き上げ目安額を決める最低賃金(最賃)に関する議論が30日、厚生労働省の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)で始まる。現在、全国平均時給は961円。物価上昇を背景に岸田文雄首相が全国平均で時給1000円達成に意欲を示し、大台に乗る可能性は高い。今後の継続的な引き上げを客観的に示す新たな仕組みの導入など、最賃のあり方が課題となりそうだ。(幕井梅芳)

中央最低賃金審議会は、労使の代表と、公益代表の学識経験者の三者で構成し、協議する。例年7月中に引き上げ目安額を決める。この額を基に、都道府県の審議会が話し合い、8月ごろに実際の引き上げ額を決定する。10月以降、順次適用し、非正規労働者を含めたすべての働く人が対象となる。

岸田首相は、3月に開かれた政労使会議で、「全国加重平均で1000円超を目指す」と表明した。経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも、こうした考え方を明記した。

これまで最低賃金の引き上げ率は、90年代以降の経済低迷を背景に総じて1%未満、最大2%台前半だった。しかし16年以降、新型コロナウイルス感染症が発生した20年を除けば3%を上回り、22年までの7年間で20%以上も引き上げられてきた。仮に、平均1000円ということになると、引き上げ額は39円となり、率にして4・06%で、92年以来の4%台の水準となる。

経営者側の受け止めはどうか。日本商工会議所が2月に中小企業6000社を対象に実施した調査では、23年度最低賃金の改定について、「引き上げるべき」と答えた中小企業は42・2%で、「引き下げるべき、もしくは現状の額を維持するべき」の33・7%を上回った。人手不足によって、人材流出を防いだり、人材確保のために賃上げせざるを得ないという事情がある。

海外での賃上げの流れも加速する。23年1―4月の為替相場を前提にした主要国の最低賃金(23年4月1日時点)は、フランスとドイツが1386円、韓国は991円と日本を上回る。

最低賃金が1000円を上回るのは、23年か24年には実現する可能性が高い。その後の最賃のあり方が課題となる。法政大学経営大学院の山田久教授は、「平均賃金水準に対する比率を中長期的な目標として設定する仕組みを導入すべき」と提案する。平均賃金ベースで日本とほぼ同水準の英国が、中位賃金に対する比率を3分の2まで引き上げるという目標を設定していることは参考になる。

合わせて、産業別最低賃金制度の活用も重要だ。産業別に労使が横の連携を深め、人材育成や取引価格の適正化で協調体制を構築し、生産性の向上につなげる。中期的な賃上げ目標と産業別最賃の活用が将来の最賃のあり方を占う試金石となりそうだ。

日刊工業新聞 2023年06月30日

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