トヨタ春闘は初回交渉で満額回答、中小に賃上げ機運を波及させるか
トヨタ自動車が2023年春闘において、初回の労使交渉での満額回答を決めた。大幅な賃上げと、一時金の要求に応じる。資材やエネルギー費用が高騰しコスト負担が重くなる中での異例の決断は、物価上昇への対応と採用時の魅力向上を図るだけでなく、自動車産業全体に賃上げ機運を波及させる狙いがある。中小企業も含めた2次取引先以降への広がりが焦点だ。
「トヨタのみならず産業全体への思いを持って、このタイミングでの回答とする」。トヨタ自動車労働組合との第1回労使交渉の場で、4月に社長に就任する佐藤恒治執行役員は、こう述べた。豊田章男社長は交渉には出ず、佐藤次期社長をはじめとする新チームが臨んだ。
労組は年間6・7カ月分の一時金と、過去20年間で最高水準の賃上げを要求していた。これに満額回答したほか、パートタイマーやシニア期間従業員の賃金も引き上げる。トヨタ系労組を束ねる全トヨタ労働組合連合会の坂神孝明副事務局長は「分配の好循環を作り出そうとしていると受け止めている。自動車産業をはじめ、同じ働く仲間に波及すれば」との思いを述べた。
トヨタは23年4―9月期も、仕入れ先の資材やエネ費用の高騰分を負担する方針。東崇徳総務・人事本部長は「仕入れ先も苦しい中で、賃上げが本当に良い風を吹かせられるのか。覚悟を伴う決断だ」と話す。従来の慣習にとらわれない春闘のあり方で、分配の好循環と、ひいては長期的な業界の競争力強化につなげる。
日刊工業新聞 2023年02月24日