ロボットが人の筆さばき“完コピ”書道披露…ファナックが加速させる製品・技術の“進化”
ファナックが製造業の変化に応える形で製品・技術の“進化”を加速させている。このほど本社(山梨県忍野村)で開催した「新商品発表展示会」では、自動車業界の電気自動車(EV)生産拡大を見据えたロボットや、ワーク(加工対象物)の集約加工ニーズに対応するロボマシンなどを訴求。工場自動化(FA)、ロボット、ロボマシンの3事業を中心に、進化の一端を幅広くアピールした。
こちらもおすすめ
「メカの機構は絶対に変えないことにこだわった」―。安部健一郎常務執行役員が話すのは可搬質量50キログラムに対応した世界初の協働ロボット。新商品発表展示会で初披露した。
同ロボットは機構部を変更することなく、ソフトウエアのアップデートによって可搬能力や手首軸の許容負荷イナーシャが大幅に向上する。これにより、人がロボット周辺を横切る現場でも重量物搬送を自動化したいニーズなどに応えられる。会場では自動車のフロントガラスの窓枠を検出、位置補正をしながら取り付けるシステムを実演。一連の動きを食い入るように見つめる来場者の姿が見られた。
安部常務執行役員は「協働ロボット『CRXシリーズ』を目的に来場される方も多い」と明かす。CRXシリーズでは機能の進化を体験してもらうため、筆を持ったロボットをダイレクトティーチするコーナーを設置。題字に設定した漢字の「永」の字は、はらいなど書道に必要とされる基本技法8種類が含まれているが、人がダイレクトティーチした通りに加減速や力加減などを再現した。人の手技を“完コピ”するプログラムを組むことはロボットエンジニアであっても困難とされるが、ダイレクトティーチで簡単に教示できることをアピールした。
また、FA事業では「最新のCNC・サーボとデジタルツインによる最適化」をテーマに展開。効率的に加工プロセスを最適化するデジタル技術や、工作機械に簡易的にロボットを導入する機能などを紹介。エネルギーロスの低減や、大量生産から少量多品種生産への順応など多様な進化が求められる工作機械の課題解決に役立つ各種機能を提案した。
ロボマシン事業でもワークの集約加工ニーズを捉え、従来のマシニング加工に加え、ネジ切りといった旋削加工を可能にしたロボドリル(小型切削加工機)を参考出展した。来場者がファナック社員の説明に耳を傾け、細かく質問する光景も見られ、同社製品の進化を強く感じさせた。