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スタートアップ×大企業の協業円滑に、特許庁が手引き書作成

特許庁は大企業とスタートアップの協業を円滑に進める手引き書を作成した。成果を出せるオープンイノベーションの体制を構築する四つのポイントを示し、関係強化を後押しする。オープンイノベーションは自社にはないリソース(経営資源)を活用できる一方で、双方が自社の利益のみを追求し、成果が生まれないケースもある。特許庁は手引き書などを通じて、オープンイノベーションを促進する環境作りにつなげる。

特許庁は「事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進のためのマナーブック」を19日に公開する。良好な協業関係に向けて、大企業とスタートアップの双方が意識すべきポイントを「マナー」として挙げた。

オープンイノベーションの体制を構築するのに必要なポイントを四つにまとめており、具体的には共通の目的のすりあわせや意思決定のスピードの必要性などを取り上げた。双方の狙いや意向の共有を促すとともに、リスク回避にウェートを置きすぎないようにすることも重要とした。

また、共同研究契約などを結ぶ際に参考となる「モデル契約書」を利用する際の注意点なども掲載する。オープンイノベーションに向けた交渉や契約時に役立ててもらう。

大企業とスタートアップが連携するオープンイノベーションでは、共同研究した特許が大企業に独占されたり、周辺特許を囲い込まれたりするといった取引慣行が指摘されていた。概念実証(PoC)の対価が支払われなかったり、ライセンスの無償提供を求められるといった課題もあった。

こうした背景から経済産業省と公正取引委員会は2021年3月に大企業とスタートアップ間の共同研究などの連携についての指針を策定した。特許庁もモデル契約書を示して、オープンイノベーションの創出を支援している。

日刊工業新聞 2023年05月19日

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