食品や化粧品に用いられるコラーゲン、実は「魚の鱗」からできていた!
体を守る皮膚の構造とコラーゲン
硬骨魚の骨は、哺乳類などと同様にⅠ型コラーゲンを主成分にしています。骨中に血管が通り、短期間で代謝していく仕組みも変わりません。骨以外では皮や鱗にも多くのコラーゲンが含まれ、これもⅠ型です。おもしろいところでは、浮袋もⅠ型コラーゲンでできています。硬骨魚類のコラーゲンの大きな特徴は、ヒドロキシプロリンが少なく、変性温度が低いという点でしょう。この変性温度の低さを活かしたさまざまなコラーゲン関連製品に利用され、今後も応用範囲の広がりが期待されています。
機能性食品や化粧品に用いられることが多いマリンコラーゲンは、魚の鱗を原料にしてつくられます。世界中で大量に養殖されているテラピアの鱗を希酸で脱灰したものが流通しており、皮と違って脂を除く必要がないことから重宝されているのです。ちなみに鱗は、外側がケラチンとミネラル層、皮膚側がコラーゲン層になります。
昔は、イワシやサンマを捕る漁船の船倉に残った鱗からコラーゲン製品をつくっていました。もともと廃棄物でしたが、海中に投棄するとヘドロとして蓄積してしまうため、なんとか再利用できないかと研究が始まったのです。
最初は鱗を酢で洗い、カルシウムを抜いていましたが、この方法だとコラーゲンもゼラチンに分解されてしまいます。そこで低温で処理することにし、その後に酵素で分解するときれいなコラーゲンができたのです。
1990年代になって狂牛病の発生により、それまで食用や化粧品のコラーゲンの原料として多く用いられてきたウシ皮の流通量が激減してしまいました。そして、代替品の開発が急がれていたときに魚の鱗から安定してコラーゲンを生産できることになり、これがまさに渡りに船となったのです。以降、海洋性原料に由来するコラーゲン製品が次々と生まれていったのは言うまでもありません。
<販売サイト>
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Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア
<書籍紹介>
テレビ出演歴もあるコラーゲン研究・用途開発の第一人者が“超” わかりやすく紹介。健康・食品・医療・工業製品など身近なところで結構使われているコラーゲンの知られざる秘密に迫る。コラーゲンの働きなどのメカニズムも、イラスト図解で一目瞭然に理解できる。
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいコラーゲンの本
著者名:野村義宏
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,760円
<著者>
野村義宏 (のむら よしひろ)
東京農工大学大学院 農学研究院 教授
1962年宮城県生まれ。1984年東京農工大学農学部農芸化学科卒業。1990年東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了(農学博士)。2013年東京農工大学大学院農学研究院教授。2017年から日本皮革技術協会理事長を兼務。コラーゲンをはじめとした硬蛋白質の基礎から応用までの研究に従事する。
2011年11月26日放送、NTV系「世界一受けたい授業」骨肌髪筋肉の老化を遅らせる!? 解明されたコラーゲンの新事実! 出演
<目次>
第1章 コラーゲンってなに?
第2章 体の中のいろいろなコラーゲン
第3章 動物や進化で異なるコラーゲン
第4章 コラーゲンはどうやってでき、どう分解される?
第5章 革や墨、膠、写真フィルムもコラーゲン
第6章 食べる・飲むコラーゲン
第7章 コラーゲンと美容
第8章 コラーゲンと病気・医療