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面積20分の1、OKI子会社が量産する「高トルク小型モーター」が注目を集める理由

面積20分の1、OKI子会社が量産する「高トルク小型モーター」が注目を集める理由

新開発のサムベリーナ㊨と従来のハイブリッドモーター

OKI傘下で精密小型モーターを手がけるOKIマイクロ技研(OME、福島県二本松市、富澤将一社長)は、高トルク小型モーター「サムベリーナ」の量産を8―9月に始める。従来は現金自動預払機(ATM)やガス遮断弁、アミューズメント向けに事業を展開してきたが、サムベリーナで産業機械向け市場の開拓を狙う。ロボットハンドや医療機器、飛行ロボット(ドローン)搭載モジュールなどでの活用を見込む。(高島里沙)

サムベリーナの試作機は完成しており、2億円をかけて工場に製造ラインや試験設備を導入するなど、量産の準備を進めている。すでに30社ほどから問い合わせがあり、富澤社長は「今までに付き合いのなかった企業とつながりを持つことができた」と手応えを語る。新たな主戦場に据える産業用ロボット業界だけではなく、自社の生産ラインの改善につなげたいといった予想外のニーズもあるという。

サムベリーナは、直径12ミリメートル、長さ25・5ミリメートル、重さ16・5グラムで、従来の同サイズ比2倍のトルク定数を持つ。既存のハイブリッドモーターと比べると面積比で20分の1と極小だ。狭い空間での作業や繊細な作業ができる多指多関節ロボットハンドの小型軽量化を実現する。

アダチ・プロテクノの工場。自社開発の巻線機を約20台設置する

極狭スペースでも巻線占有率70%以上を確保する巻線技術などの活用により、高い回転力や精度を得られる多極多スロットコアード構造を実現した。門間俊也執行役員は「磁場解析を含む構造を作り上げるための設計や生産技術の向上に苦労した」と語る。磁場シミュレーションでは解析値と実測値に乖離(かいり)が生じる中、これまでのノウハウの積み上げなどで早期開発につなげた。

OMEが主に開発や営業を手がけるのに対して、同じ敷地内にある傘下のアダチ・プロテクノ(福島県二本松市)が生産を担う。モーターに欠かせない巻線部品を製造する機械は自社製であり、内製化によって投資額を抑えている。

工場では、プリンターなどに用いられるハイブリッドモーターを製造するための2軸の巻線機を約20台保有。2軸の巻線機は珍しいといい、銅線を巻き取った後に特定箇所に巻き付けて固定するからげ処理まで対応する。

OMEの22年度の売上高は約50億円で23年度も横ばいを見込む。現在、売り上げベースではアミューズメント業界が5割、残りをガスやATM向けが占める。世界のモーター市場で付加価値の高い中・少量領域が占める割合は10―20%だ。小型軽量モーターを得意とするOMEは、将来的に中・少量領域の20―30%のシェア獲得を狙う。ロボット関連事業の売上高では25年度に年間5億円を目指す。一連の取り組みで収益源の多様化につなげられるかが試される。

日刊工業新聞 2023年04月20日

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