CLT利用と1時間の耐火性能を両立、大成建設が開発した壁部材の貢献
大成建設は木質仕上げによる意匠性の向上や脱炭素社会への貢献を視野に、表層への直交集成板(CLT)利用と1時間の耐火性能を両立させた壁部材を提案する。このほど、CLTで耐火被覆用のケイ酸カルシウム板を挟み込んだ耐火壁を開発。1時間耐火構造の大臣認定を取得した。鉄骨造の木質化に適する部材としてオフィスや住宅、宿泊施設などに訴求。年1件ずつの適用を目指す。
大成建設は鋼管柱とロックウールを長時間の加熱に強いケイ酸カルシウム板で挟み、その外側をCLTで覆った耐火壁「T―WOOD TAIKA」を完成。石こうボードの約半分と軽いケイ酸カルシウム板により、施工性も向上させた。脱炭素社会に向け建築物への木材利用が求められる中、内外壁への採用を見込む。樹種を問わないため、木材の地産地消も可能になる。
木材を内外壁や柱、床、梁といった部材の表層に使う場合、燃焼によって火災が長期化する可能性が指摘されている。開発したT―WOOD TAIKAは耐火試験の結果、CLTの焼失後もケイ酸カルシウム板で燃焼を食い止めることが確認された。これにより内部にある構造部材の温度上昇を抑え、鋼管柱などの崩壊で建築物が倒壊したり延焼したりする事態を防ぐ。
T―WOOD TAIKAは実施設計で提案しながら、最適な施工方法を詰める方針。同社は木質の耐火部材を「T―WOOD TAIKA」としてシリーズ化。2018年には鋼管柱をケイ酸カルシウム板と集成材で巻いた耐火構造の柱を開発し、さいたま市の大宮区役所新庁舎に適用した。鋼管柱を木材で覆った準耐火構造の柱も、OKIの本庄工場に採用されている。
日刊工業新聞2023年3月6日