製造業で広がる「オンライン工場見学」、新たな販促スタイルは定着するか?
オンライン工場見学が広がっている。コロナ禍にあっても製造現場と取引先とで密接な関係を維持し、事業の円滑な継続や新規顧客の開拓につなげるためだ。OKIは電子機器製造受託サービス(EMS)工場のオンライン見学を12日に開始する。TDKラムダ(東京都中央区、矢代博行社長、03・6778・1111)も、企業向けオンライン工場見学を始めた。
OKIはインターネット会議システムと高解像度カメラを活用した「オンライン工場立会システム」を構築した。カメラを搭載した可動台車で、技術者が遠隔で製造現場を案内。顧客の相談・質疑に直接応じる。EMS事業にとって工場見学は販促活動の一環だがコロナ禍でリアルな見学の実施は難しい。そこでオンラインで新規顧客開拓を加速する。
従来は顧客立ち会いのもと工場内で実施していた試験、検査、工程監査なども遠隔で対応する。まず本庄工場(埼玉県本庄市)、OKIサーキットテクノロジー(山形県鶴岡市)、OKIエンジニアリング(東京都練馬区)の3拠点で始め2021年度中には全11拠点に拡大する。
TDKラムダは長岡テクニカルセンター(新潟県長岡市)でオンライン見学を始めた。ウェブ会議システムなどを活用し、案内役が説明しながら生産現場をリアルタイム中継する。コロナ禍でも安定的に事業活動や生産活動していることをアピールし自社への信頼性を高める。同社はTDKの電源事業を担う。スイッチング電源やユニット型電源、ノイズ除去フィルターなどを手がけ同センターがマザー工場。北米と中国、マレーシア、英国、イスラエルの拠点にも開発・製造・販売・保守機能を持たせており、今後それぞれの現地社員も長岡でのノウハウを共有し、すべての拠点でオンライン工場見学ができる体制を整える。
顧客企業が、製品開発や生産などの段階ごとに行う工場監査もオンラインで実施する。コロナ以前と同等の活動を維持していく。
OKIでは顧客が契約前に設備や生産方式などを確認するため、月10件程度の見学があった。コロナ禍でそれが同1―2件、緊急事態宣言中は0件に減った。工場見学ができず製品の立ち上げを延期した顧客も多いという。TDKラムダでは現在、従業員の安全確保のため外部からの訪問を中止にしているが19年には約300社が工場見学で訪問した。