ゆで加減や麺のコシでロボと差別化、富士工業所がそば・うどん店向け自動化システム開発
富士工業所(東京都荒川区、渡辺恭介社長)は、そば店やうどん店向けに、ゆで麺器から麺を受け取り、ゆで上げ直後のあら熱やヌメリを除去するまでの一連工程を自動化できるシステムを7月をめどに開発する。調理者の違いによる品質の差や劣化を防ぎ、作業効率も向上できるため、麺のおいしさが高まる。コロナ禍の落ち着きや外国人観光客の増加で外食店の来客が増えており、「需要期の夏が来る前に開発を目指す」(同社)方針だ。
そば店ではそば粉や小麦粉を練って固まりを作り、包丁やスライサーで生麺にしてから、ゆで麺器でゆで上げて隣のシンクに移す。シンクは水流で麺のヌメリやあら熱を取り除く噴流槽と、氷水で麺にツヤ、コシを与える冷却槽で構成。ゆで麺器からシンクの噴流槽に麺を移す工程と、噴流槽から冷却槽に麺を移す工程は人手に頼っているのが現状だ。
そばやうどんは作業が遅れたり、タイミングがずれたりすると、品質が大きく低下する。麺同士がダマになってくっついてしまったり、コシのない軟らかい麺や硬すぎる麺になるため、「移すタイミングで秒単位の管理が求められる」(同社)。少人数やアルバイトの多いそば店では、このタイミングがずれることで不良品が数多く発生し、課題になっていたという。
そうした背景から同社へ「外食のそば店やうどん店から、麺を移す工程を自動化してほしいとの要望が多く寄せられた」(同)ため、開発に踏み切った。自動化自体はゆで麺器やシンクにセンサーとカメラを取り付ける方法が一般的だが、それだと価格が高額になる。資金力の乏しい零細業が多いそば店の実態を考え、ゆで麺器とシンクが作業途中で出す電気信号をキャッチし、それをスムーズにつなぎ合わせることで自動化を達成し、追加費用も数十万円の投資で済むという。
背景には富士工業所がゆで麺器やシンクで、大きなシェアを獲得している強みがある。ゆで麺器は100台以上の販売実績を持ち、既存ユーザーに商品のアップグレードや追加サービスの形で提供すれば新品機械を買うより、費用を大幅に抑えられる。
外食業界では、そばゆでロボットも登場しているが「小麦粉主体の大衆そばはともかく、高級な十割そばや二八そばはロボット化がまだ難しい。ゆで加減や麺のコシなど品質で勝負したい」(同)と、差別化に自信をのぞかせる。