「温室ガス」35年に6割削減必要、IPCC報告書の警告
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は20日、最新の科学的知見から地球温暖化の影響を検討した第6次評価報告書を公表した。世界の気温上昇を産業革命前に比べて1・5度Cに抑えるため2025年までに温室効果ガス排出量を減少に転じさせ、30年までに19年比43%削減、35年までに同60%削減する必要性を示した。30年以降の日本の目標設定にも影響しそうだ。
IPCCは世界の科学者が温暖化の進行を定期的に分析、被害などに関する報告書をまとめている。今回の報告書は21―22年に発行した3分野の報告書の統合版。
激化した自然災害により33億―36億人が危険な環境に置かれていると分析し、深刻な被害を防ぐために1・5度Cに抑制する必要があると強調。
すでに1・1度C上昇しており、達成は「この10年の温室効果ガス排出削減の水準によって決まる」と指摘した。
その上で30年に同43%減、35年に同60%減、40年に同69%減、50年には同84%削減とし、残った排出量を吸収して実質ゼロにすると1・5度C達成の可能性が高まるとしている。35年以降の見通しは初めて提示された。
日本は30年度までに13年度比46%削減し、50年に実質ゼロとする目標を表明している。国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は各国に対して35年目標の提出を求めており、科学者から示された35年以降の排出削減量が、国内の議論にも影響しそうだ。
日刊工業新聞 2023年03月21日