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見た目はブルドーザーのよう…発電所で重宝される「水中排砂ロボット」の実力

見た目はブルドーザーのよう…発電所で重宝される「水中排砂ロボット」の実力

水路に貯まった土砂を回収する水中排砂ロボット

発電所の保守にロボットが欠かせなくなっている。電力設備工事を手がけるシーテック(名古屋市緑区、仰木一郎社長)は、ダムや火力・原子力発電所の保守に水中ロボットを活用する。電力需給が逼迫(ひっぱく)する状況下では、発電所の運転を止めずに点検できる手段として重宝されている。さらに同社は、発電所で磨き上げた水中保守技術を電力業界以外にも広げていきたい考えだ。(名古屋・永原尚大)

ブルドーザーのような見た目のロボットが水底でうなりを上げ、発電所の取水路にたまった砂や貝殻をホースで地上に吸い出す。「水中排砂(はいさ)ロボット」と呼ばれ、最大10メートルまで潜り堆積物が約15%混じった水を1時間に80―90立方メートル吸い上げる力を持つ。

火力や原子力発電所では、海水を冷却水などに使っている。定期的に取水路を浚渫(しゅんせつ)しなければ、砂や貝殻で詰まって運転が止まりかねない。ある火力発電所からは同ロボの稼働を毎年100日程度依頼されるほど、貝殻や砂が溜まるという。

かつてはクラムシェル(貝殻形状のバケット)を取り付けたショベルカーで浚渫していた。だが「(水路の形状や位置によって)回収できない場所がある」(シーテック土木建築本部の小野田昭夫氏)といった課題があった。それを解決したのが同ロボだ。取水路へクレーンで運んだ後は、地上からの遠隔操作でまんべんなく浚渫する。現在は3台体制で運用しており、中部電力やJERAなどの各地にある発電所を転々とする。

2022年夏には従来の油圧駆動型に加え、水圧駆動のロボを導入。油漏れのリスクがないため「水道施設の浚渫にも使える」(同)といい、浚渫工事の提案先を広げる。

水中に潜り、構造物の破損や板厚などを調査するロボット

水を抜かず効率的に検査できないか―。その願望を叶えたのが潜水ロボだ。造船会社や中部電と共同開発し、約20年前に導入した。潜水ロボで詳細に調査すべき箇所を洗い出し、後に潜水士が詳細に検査する形だ。

数年周期で訪れる定期検査で活躍し、数カ月を要する検査期間を数日に短縮する。「検査コストはケタが一つ減るほど圧縮できる」(シーテック岐阜支社の長屋二喜男土木機械課長)。地上からケーブルで給電するため、活動限界の定めもない。今後は水道の送水管などの点検・調査需要も取り込む考えだ。

日刊工業新聞 2023年2月28日

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製造現場からオフィスまで、その存在感が増すロボット。多様な業界によるその活用法を追いました。

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