iPS細胞技術活用、富士フイルムがCRO事業に参入
富士フイルムは、医薬品研究開発業務受託機関(CRO)事業に本格参入する。米子会社フジフイルム・セルラー・ダイナミクス(FCDI)が持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術などを活用し、前臨床試験や医薬品のシーズ探索を支援する。全体の戦略を立案・推進する「CRO事業推進室」を4月1日に新設し、2028年度までに国内売り上げ100億円を目指すほか、早期の海外展開も視野に入れる。
同事業では、ヒトiPS細胞由来分化細胞と幅広い製品開発で蓄積してきた人工知能(AI)技術を組み合わせ、医薬品候補物質の有効性や安全性の評価、また作用機序解析のサービスを提供する。マウスなどを使った動物実験を削減したいという顧客ニーズにも応える。
バイオ関連技術の研究開発を行う「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所」や創薬の知見を有する富士フイルム富山化学(東京都中央区)、国内販売網を持つ富士フイルム和光純薬(大阪市中央区)といったグループのリソースを活用し、国内で事業を展開する。
医薬品市場では、バイオ医薬品の分野で新薬の研究開発が活発化している。製薬企業やバイオベンチャーは新薬開発の成功確率の向上と創薬プロセスの効率化のため、研究開発の初期段階から高度な解析技術・ノウハウを有するCROと協業するケースが増加している。CROビジネスの世界市場は年率約10%増えているという。
日刊工業新聞 2023年03月16日