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富士フイルムが試作、近赤外偏光フイルムのスゴい機能

富士フイルムが試作、近赤外偏光フイルムのスゴい機能

富士フイルムが試作したフィルムを貼った偏光板(左)と通常の偏光板(同社提供)

富士フイルムは近赤外偏光フィルムの試作品を開発した。フィルムを通過した近赤外光を偏光にし、可視光はそのまま通す性質を持つ。また、フィルムの色を透明にしたため、目立ちにくく場所を問わず貼り付けられる。人の静脈を検出する際など、近赤外光の活用が求められる場面に幅広く対応できる製品と位置付ける。発売時期は未定で、今後、顧客のニーズを見極めながら開発を進めていく。

透明な近赤外偏光フィルムを用いることで人の静脈を鮮明に見られる(右が富士フイルムの試作品を用いて映した映像)

偏光は、ある特定の方向にのみ振動する光。特定の振動方向の光を通す偏光フィルムには、反射型や吸収型といった種類がある。富士フイルムが開発した試作品は光を選択的に吸収できる吸収型で、反射ノイズが無く迷光(光のノイズ成分)を引き起こさない点が特徴。厚さは1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)で、貼り付ける対象物の形状の制約を受けにくい。

近赤外光の偏光を活用すると、生体組織を感度よく見ることができる。例えば光源であるライトの表面に近赤外偏光フィルムを貼り付けて手に照射。その手を、同フィルムをレンズに貼ったカメラで撮影すると、静脈を鮮明に読み取れる。

他の活用事例としては、対象物から反射された特定の波長の光を捉えることで、目視では識別できない情報を可視化できる「マルチスペクトルカメラシステム」への搭載もできるという。開発した試作品を同システムの既存フィルムの代わりに試験的に搭載したところ、目的とする波長を偏光に変えられ、偏光フィルムとしての役割を果たせた。

富士フイルムは、2020年に偏光方式を採用したマルチスペクトルカメラシステムを開発したと発表。同様のシステムのほか、静脈検出を含めた非接触のバイタルセンサーなど、さまざまな要望に対応したい考えだ。

日刊工業新聞 2023年01月11日

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