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半導体製造で新技術相次ぐ…富士フイルム、後工程向け「半導体研磨剤」投入の勝算

富士フイルムは半導体製造の後工程向けに特化した半導体研磨材料(CMPスラリー)を2023年末をめどに市場投入する。多層化や配線ピッチの狭小化など後工程技術の進展で、再配線層を平坦化するための加工が必要になるとみて製品化を目指す。後工程用CMPスラリーは昭和電工マテリアルズも開発を進めており、次世代技術の普及は日本企業が高シェアを占める半導体材料需要を引き上げる可能性を持つ。

CMPスラリーは硬さの異なる配線や絶縁膜が存在する半導体表面を均一にするための研磨剤。半導体チップへの再配線は主に銅メッキで行われ、後工程用CMPスラリーは金属部分よりもポリイミドやエポキシ樹脂などの絶縁材料を研磨対象とする。富士フイルムは半導体後工程請負業(OSAT)などに提案し、採用を狙う。

前工程用と同じコロイダルシリカを砥粒に使用するが、後工程では対象物の性質が異なるため添加剤などの配合を工夫し研磨精度を高める。材料別のラインアップを用意するほか、顧客の要求精度に応じた配合も行う。一部材料向けや研磨後に使う洗浄剤の先行開発も計画する。

足元では次世代の2・X次元、3次元実装などの後工程技術が注目される。半導体の性能向上のため再配線のピッチが狭小化していることや、チップを積層する際に平坦化が求められることなどからCMP工程数は今後増えると予想される。ただ、こうした技術は複雑で後工程用の新材料は当面、開発用途が中心とみる。

富士フイルムは銅配線向けのCMPスラリーでトップシェアを握る。調査会社の富士経済(東京都中央区)によるとCMPスラリーの市場規模は26年に21年比28・6%増の約18億ドル(2412億円)になる見通し。後工程技術の開発動向や普及次第では、半導体材料市場の成長が加速することも期待される。

半導体製造では近年、前工程における回路の微細化に加え、後工程のパッケージングの高密度化が注目される。キヤノンが半導体デバイスの3次元技術に寄与する後工程向けi線半導体露光装置を市場投入するなど、日本が強みを握る装置業界でも新技術が相次ぐ。


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日刊工業新聞 2022年12月29日

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