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HMD端末市場で強み生かす、旭化成が素材と電子部品の横断マーケを始めた!

HMD端末市場で強み生かす、旭化成が素材と電子部品の横断マーケを始めた!

WGFを貼り合わせたレンズの加工例

旭化成拡張現実(AR)仮想現実(VR)技術向けに、素材と電子部品を横断したマーケティングを開始した。ヘッドマウントディスプレー(HMD)機器を大幅に薄くできるレンズ材料や、HMDに搭載するカメラ向けの頭ぶれ補正技術などを開発した。今後、AR/VRの普及に向けてHMDは改良が進むとみて、社内横断の提案活動で商機を広げる。(梶原洵子)

AR/VRは徐々に市民権を得てきた段階で、HMD端末には改善の余地が多い。旭化成はまず端末の厚さに着目し、薄型端末に使われるパンケーキレンズ材料として低複屈折透明樹脂「AZP」と反射型偏光フィルム「WGF」の提案を始めた。貼り合わせて使うと、端末の厚さを従来の2分の1から3分の1程度にできる。

同レンズを使う端末は光(映像)を折り返しながら拡大することで、レンズとディスプレー間の距離を狭めて薄型化できる。WGFはナノインプリント技術で微細なアルミニウム配線を形成しており「曲率の高い曲面レンズに貼っても配線がゆがみにくい」(旭化成担当者)。単独でも使えるが、AZP製の曲面レンズとWGFを組み合わせると、より高い性能を発揮できる。

AZPはすでにHMDへの採用が決まり、WGFは2024―25年頃の採用を目指す。

頭ぶれ補正は頭の揺れを予想し、これを打ち消すようにレンズを動かすことでHMD搭載のカメラ映像のぶれを防ぐ。スマートフォン用カメラ向けの手ぶれ補正技術を応用した。すでに頭ぶれ専用アルゴリズム開発を完了しており、次は他社と協力してモジュールを開発する。24年度に評価サンプルの提供開始を目指す。

「頭ぶれ補正は、SLAM(自己位置推定とマッピングを同時に行う技術)の精度向上などにもつながる」(同社担当者)という。

同社はこのほかAR/VR向けに、電子部品技術を用いて、片手の小さな動きで操作できる指輪型コントローラーのコンセプトや体温を常時モニタリングできる新型の体温センサーを開発している。

矢野経済研究所の22年の調査によると、国内のARやVR用のHMD端末出荷台数は21年の72万台から27年には5・4倍の386万台に拡大すると予想される。今後のHMD端末の進化に向けて、旭化成は素材と電子部品の両方を持つ強みを生かす。


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日刊工業新聞 2023年03月15日

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