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体温測定0.1秒以内、旭化成が量産する「ウエアラブル向け温度センサー」の仕組み

体温測定0.1秒以内、旭化成が量産する「ウエアラブル向け温度センサー」の仕組み

試作したデバイスを搭載したウエアラブル端末

旭化成は2023年中に、0・1秒以内で体温を測定できる温度センサーの量産を始める。測定時間を従来のセンサーの1秒以内から大幅に短縮し、装着した瞬間から皮膚温を測定できる。ワイヤレスイヤホンやスマートウオッチなどウエアラブル機器での常時体温モニタリング用途の開拓を狙う。運動時の急激な体温変化を捉えることで、運動強度の推定にも利用できると想定する。

旭化成の温度センサーは、皮膚から発せられた赤外線を直接電流に変換して測定するクオンタム(光電変換)式を採用。非接触型体温計に使われる既存のサーマル式に比べ測定時間が短く、低消費電力で小型という特徴を持つ。原理的に周辺の温度の影響を受けにくい。現在、クオンタム式の体温センサーは市場にないという。

まず23年から、赤外線センサーと同センサー用のASIC(特定用途向けIC)をそれぞれウエハーの形状で供給を始める。25年には、センサーとASICをパッケージ化したデバイスの提供を始める予定だ。

健康意識の高まりや運動習慣の増加などにより、個人の身体状態をモニタリングするニーズは今後も高まると予想される。同社では体を動かす仮想現実(VR)ゲームなども、体温や運動強度のモニタリングの用途となり得るとみる。

既存のサーマル式センサーは、センサー内の高温部分と低温部分の温度差によって生じる電位差(ゼーベック効果)で測定する。測定時間は1秒以内。対象から赤外線を受けたセンサー部が熱平衡にある必要があり、時間がかかる。構造的に周辺温度の影響を受けやすい。


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日刊工業新聞 2023年02月24日

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