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「竹中・鹿島」に清水も参画!技術提携の広がりで建設業界の課題は解決するか

竹中工務店鹿島が1月に発表した包括技術連携に、清水建設が9月にも参画することが明らかになった。ゼネコン大手5社のうち3社が手を組むことで、建設作業員の人手不足解消や建設ツールの開発・調達コストの削減、作業現場の環境改善などの効果が期待される。準大手・中堅ゼネコンや建設以外の業界から参画の動きもあり、業界の垣根を越えた連携に発展する可能性も出てきた。

包括技術連携は建設業界全体の生産性向上を目指したもの。ロボット、IoT(モノのインターネット)技術の活用を中心に、建設現場で共通の機械や材料の共同開発や、量産化によるコスト削減などを進めるのが狙い。

新たに参画することになる清水建設は建築用ロボット技術などで強みを持ち、開発の短期化やコスト削減に加え、下請けとなる協力会社の職場環境改善に期待する。

関係者によれば「新型コロナウイルス感染拡大で遅れている3社による基本合意を、来月にも締結したい」としている。

竹中工務店と鹿島の2社は、6月に技術連携の第1弾として遠隔操作が可能なタワークレーンを開発。年内にも第2弾を公表する。ここに清水建設が加わり、さまざまな機能を持つロボット開発などが本格化する見通し。

参画を決めていないゼネコン大手のある幹部は、「同業者より技術面では先行する部分もあるため、参画するメリットが見当たらない。ただ経済状況が大きく変化する中で状況が一変することもある」と、今後の参画に含みを持たせる。

また中堅ゼネコンが参画を打診する動きもあり、搬送用ロボット開発などで他業種が参画の意向を示しているという。清水建設の参画を機に技術連携の枠組みが広がりそうだ。

解説/「共創」領域での協調急ぐ

少子高齢化のさらなる進展により、国内では今後も建設作業員不足が予想される。日本建設業連合会は2014年度から25年度までに建設技能労働者は128万人減り、216万人になると試算。そのため政府は同期間に20%の生産性向上が必要だとしている。

すでに一部の建設作業現場では、若手の建設業離れと就業者の高齢化などで工期遅れが深刻化。労働力不足を外国人技能実習生らに頼っている状況だ。その一方で、新型コロナウイルス感染拡大により密を回避するロボット技術開発や、遠隔操作による作業現場の環境作りが急務だという認識も強まっている。

労働力不足には拍車がかかる可能性が大きい。政府が進める働き方改革により、24年4月に残業規制を導入するためだ。研究開発やコスト低減をさらにスピードアップしていくためにも、建設業界には「競争」領域と一線を画した「共創」領域での協調が迫られる。(編集委員・山下哲二)


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