ニュースイッチ

“食生活をロボティクスで革新する”スタートアップ社長の経営哲学

“食生活をロボティクスで革新する”スタートアップ社長の経営哲学

沢登哲也社長

ポテトサラダなどの総菜盛り付けロボットや、立ち食いそば店のそばゆでロボット。コネクテッドロボティクス(東京都小金井市)が手がけるロボット商品は、一般の人にわかりやすい。沢登哲也社長は2005年に東大工学部計数工学科を卒業、08年に京大大学院の情報学研究科を修了後、外食企業の新規飲食店立ち上げと既存店舗再生に携わった。

就職先の外食企業は当時、テレビ番組などで盛んに取り上げられる有名ベンチャー。週100時間以上のすさまじい労働を体験し「外食産業に当初、自分が思い描いていたイメージと違うと感じるとともに、この大変な業界を何とかして改善したいと思うようになった」と振り返る。その後、マサチューセッツ工科大学発ベンチャーでロボットコントローラーの開発責任者を担当。11年の独立後、14年にコネクテッドロボティクスを創業した。

外食産業は皆それぞれ一生懸命に働いているのに、利益が少ない。その理由を沢登社長はあれこれ考えるうちに「標準的な調理の作業はロボットにやらせ、人は高付加価値の仕事で分業化、効率化を進めるべきだ」の結論に思い至る。食材は液体や固体、粉体、粘性物質など“多品種のハードル”はあるものの「ソフトウエアの制御と人工知能(AI)、画像処理技術の進歩でカバーできるはずだと考えた」と、開発に取り組んだ。

16年に開発したたこ焼きロボットは客に見せながらたこ焼きを調理をするさまが受け、ヒット。ただロボの高価格や市場性については「当時から疑問を持っていた」という。その後、コロナ感染ショックが全世界に拡散、外食産業は大きな打撃を受けた。環境変化を受けて同社のロボット事業も、外食から食品工場向けにシフト。外食向けは店舗ごとの1品製作型が中心だが、食品工場向けは性能要求も厳しい代わり、実現すれば大量継続受注が見込める。「専用機メーカーになってはいけない。多様性や多品種の壁を汎用製品でいかにクリアするかだ」と、冷静に市場を見つめる。

22年に“食生活をロボティクスで革新する”というミッションを掲げた。食産業からつらい労働をなくす、ロボットとの協働を通じて食べる人にも働く人にも、ワクワク体験の提供を目指す。「現時点でロボのできることは限られている。ロボはまだまだ発展途上。今の技術でやれることを横展開して市場を広げ、ゆくゆくは農業もやりたい」とビジネス意欲を見せる。(編集委員・嶋田歩)

【略歴】さわのぼり・てつや 08年京大大学院情報学研究科修了、外食企業で新規店立ち上げなどに携わった後、ベンチャー企業でロボットコントローラー開発責任者を担当。11年独立、14年コネクテッドロボティクス創業。山梨県出身、40歳。
日刊工業新聞 2023年01月24日

編集部のおすすめ