太陽熱・太陽光を活用、地盤調査会社「ゼロエネ新本社」の全容
東北ボーリング(仙台市若林区、熊谷茂一社長)は、地中熱と太陽光を利用したゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の新本社棟を建設する。地中熱では一般的な「クローズドループ」方式に加え、地下水をそのまま利用する「オープンループ」方式を宮城県内で初めて採用。本社棟を実証実験場として活用し、成果をもとにその普及や事業化を目指す。
新本社棟は2月末に現本社と同じ若林区内に完成予定。4月17日までに移転作業を終え業務を始める。木造2階建てで延べ床面積は倉庫棟、サービスヤードを含め約964平方メートル。建物や窓の高気密・高断熱化、直射日光の遮蔽(しゃへい)などを施し、省エネルギーを徹底するほか、屋上に設置する出力36・96キロワットの太陽電池と地中熱の空調により、エネルギー使用量で3%の余剰を生み出す設計とした。余剰電力の受け皿として容量32キロワット時の蓄電池を設置。社用車として導入する電気自動車2台へ充電できるようにする。大災害時は非常用電源として活用する。
地中熱ではクローズドループで深さ50メートルの井戸22本、同100メートルの井戸1本を設ける。オープンループでは、いずれも深さ40メートルの揚水用井戸3本と還元用井戸2本で地下水を熱交換して利用後、再び地下に戻す。井戸の中で冷媒を循環させて熱交換するクローズドループに対し、オープンループは「井戸を深く掘らなくて済むのでコストを節減できる。しかも仙台平野は陸から海に向け地下水が常に流れているので非常に条件が良い」(熊谷社長)という。空調に両ループ方式を切り替えて使うことで熱効率を比較する実証も行う。
環境省の補助事業に採択されていることもあり、まずは3年間の実証で各種データを取得。これを基にオープンループの地中熱の普及やZEBのコンサルティングなど具体的な事業に展開していく。また木造社屋には宮城県石巻産の木材を大量に採用しており、「木造建築による二酸化炭素(CO2)固定、さらには植林活動によるCO2吸収にもつなげる」(同)意向。地元の教育機関と連携した“木育”活動にも積極的に参画する。