日産が高度化を加速させる4輪制御技術の全容
日産自動車が4輪制御技術の高度化を加速している。電気自動車(EV)「アリア」やスポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」に、既存の4輪駆動(4WD)システムを進化させた「eフォース」を搭載。日産はEVと独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」搭載車を電動車戦略の柱に位置付ける。他社も電動車のラインアップを展開し選択肢が拡大するなか、eフォースで走りの質を高めて差別化を図る。(増田晴香)
eフォースは前後モーターとブレーキの統合制御でハンドリング性能を向上した新技術。タイヤのわずかなすべりを検出し、各輪のグリップ限界を算出して自動的に制御する。また1万分の1秒単位の緻密なトルク制御で雪道など路面を問わず安全に運転できる。電池などで重量が増えるアリアなどでも高い運転性能を実現した。
1月下旬に長野県立科町の女神湖で開催した試乗会。アリアやeパワーを搭載した新型エクストレイルのほか、小型HV「ノート」や中型SUV「キックス」など日産の4WDモデルが一堂に会した。氷上での走行テストに記者が試乗した。
発進時はわずかにスリップを感じるものの滑らかに力強くスタートし、加速した。パワートレーン・EV技術開発本部の片倉丈嗣主管は「滑りやすい路面では常に前後のトルク配分が細かく行われ、安定した走りにつなげている」と説明。アクセルペダルから足を離すだけで前後輪の回生ブレーキが効き、十分な減速ができた。
カーブやスラロームなどでも思い通りのハンドリングが可能。ハンドルを切ると各輪に最適な駆動力が配分され、十分なグリップ力を得られた。さらに加速時にはカーブ内側のブレーキが作動し、同時にカーブ外側の駆動力を上げることで膨らみがなくスムーズに曲がることができた。
先代のエクストレイルに搭載していたエンジンベースの4WD技術「インテリジェント4×4」ではブレーキと駆動力を個々の電子制御ユニット(ECU)で制御していたが、eフォースは「両方のECUを統合した一つの頭脳で計算することで、より瞬時に最適な制御を可能にした」(片倉主管)。これによりeフォースは、インテリジェント4×4に比べ制御に必要な演算の規模が約4・5倍となった。
今後も最新技術に磨きをかけ、電動車でも変わらず“技術の日産”として存在感を示せるか。eフォースは試金石の一つとなりそうだ。
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