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ワイヤソー用クーラントでニッチトップの大智化学産業、注力する環境価値の可視化

ワイヤソー用クーラントでニッチトップの大智化学産業、注力する環境価値の可視化

環境負荷の低減に向けCFPに取り組んだ中堅社員らと籠谷社長(左から3人目)

使用済みクーラント、新品同等品に再生

大智化学産業(東京都中央区、籠谷正社長)は、電子部品材料の加工工程で使う薬液を製造販売する。特に半導体シリコンインゴットを薄くスライスするワイヤソー用クーラントは水溶性と循環型が特徴で、世界シェア1位のニッチトップだ。新たに、原材料調達から廃棄までの二酸化炭素(CO2)排出量を表すカーボンフットプリント(CFP)を検証し、環境価値の可視化にも注力する。

主力の水溶性クーラントは新品の生産と共に、顧客から使用済み液を有償で買い取り、新品同等品に再生し販売する。生産拠点の千葉山武工場(千葉県山武市)は消費電力の25%を太陽光発電、用水は100%雨水でまかなう。そして2021年に、ノルウェーの第3者機関DNVと組み主力製品のCFPを検証した。

その結果、新しい原料から作るのと比べ、循環型は1トン当たりCO2排出量が32%少なく、ワンウェイ型から切り替えた場合のCO2削減率は56%に上ることが数値で分かった。併せて、石油系原料のCO2量の可視化により仮にバイオ系に替えるとそれが約7割減ることも分かった。今後に備えて技術的評価も進めている。

CFPを通して環境価値を見える化した(千葉山武工場)

籠谷正社長は「数字で示せることの意味は大きい」と話す。国内の循環型モデルを海外展開する計画など、差別化の次の戦略につなげていく考えだ。

同社は1990年代に環境負荷を抑えた水溶性で顧客ニーズをつかみ、さらに循環型の仕組みも構築。その間に半導体製造で口径300ミリメートルのウエハーが普及し、インゴットのスライス工程の品質が重視され、クーラントは重要な副資材となった。15年に創業者による経営から日華化学グループに入り、技術や環境の知見など社員57人の組織力も磨いた。

個別売上高は非公表だが、日華化学は中期計画で2023年12月期に先端材料で売り上げ65億円、3年間平均で9・6%成長を掲げる。先端分野の顧客に環境価値で貢献し、日華化学グループでも一段の相乗効果を狙う。

日刊工業新聞 2022年12月27日

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