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「製品安全の取り組み」世界に誇る価値に

製品安全トップランナー・第16回PSアワード#01
「製品安全の取り組み」世界に誇る価値に

第16回PSアワード表彰式

製品安全に対する企業の真摯(しんし)な姿勢が安全安心な社会構築の要因となる。経済産業省は、製品安全の取り組みを顕彰するため2022年度で第16回となる「製品安全対策優良企業表彰」(PSアワード)を実施した。表彰企業の中から優れた事例を紹介する。初回は製品安全の現状と展望について田中秀明・産業保安グループ製品安全課長に聞いた。

独自の情報発信 評価

―電子商取引(EC)市場の拡大や超高齢社会など社会のあり方が大きく変化し、製品安全に新たな課題が出てきています。

「22年に発生した重大製品事故は1023件(速報値)だった。インターネットの普及で安全ではない製品が海外から持ち込まれる件数が増えている。国内代理店を経由しない製品の事故は報告されないケースが多いが実態把握に努めている。ネットモール事業者と連携したチェック体制を整えるほか、安全性に対する消費者への注意喚起などの取り組みを進めていく。また、重大製品事故の約3割が消費者の誤使用・不注意による。だが、高齢者が占める割合が増えていることは、喫緊の課題だと認識している。メーカーに対し必要なデータを提供することを通じて、誤使用を防ぎ操作性を高める高齢者対応製品の開発を促進している」

―企業に求められる安全への取り組み姿勢について考え方を教えてください。

「サプライチェーン(供給網)の各段階で製品に関わる企業に対し、自主的に製品安全への取り組みを行ってもらう必要がある。PSアワード受賞企業においては、いずれの企業も関係法令を順守することだけではなく、製品事故防止のために独自に安全性の検証や、多様な手段での情報発信などを積極的に実施している。そうした企業姿勢を高く評価したい。一般的には、品質管理部門には光が当たりにくいといわれている。安全は地味な取り組みであると捉えられる傾向にはあるが、社内でも脚光を浴びる部門として捉えてもらうため、安全をブランド化する発想がこれからは必要になる」

田中秀明・産業保安グループ製品安全課長

―安全への対応はコスト増につながるという声があります。

「製品安全に向けた努力をコストとして後ろ向きに捉えるのではなく、その取り組みを社会に発信し消費者に認知してもらうことが大切だ。その活動は他社との差別化やビジネスチャンスにもつながるはず。『製品安全の価値化』として前向きな活動を志向することが企業価値を高める。それが経営上でプラス効果になることは間違いない」

―企業が「製品安全の価値化」に舵(かじ)を切れるよう行政としてできる支援策は。

「PSアワード受賞企業を中心に、製品安全の取り組みをさらに高めてもらうため、本年度から企業向け製品安全研修を始めた。一方、消費者に製品安全の意識を持ってもらうことも重要なので、全国約300の電気店に協力してもらい『子ども向け製品安全イベント』を開催した。さらに、製品事故防止のための安全機能を有した製品の普及を図るほか、一歩先の安全対策を講じている企業のブランド価値を高めるための新制度を創設したいと考えている。そのための具体的な検討を始めた。今後もわが国の企業が推進する製品安全の取り組みが、世界に誇る価値となるよう全力で支援していく」

製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)
製品安全に積極的に取り組む製造事業者、輸入事業者、小売販売事業者、各種団体を企業単位で広く公募し、厳正な審査の上で「製品安全対策優良企業」として表彰する。各企業が扱う製品自体の安全性の評価ではなく、製品安全活動に関する取り組みを評価する。受賞企業・団体は「製品安全対策優良企業ロゴマーク」を使用し、製品安全対策の優良企業・団体であることを宣伝・広報できる。
日刊工業新聞 2023年02月06日

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