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若手の研究室立ち上げに1000万円、理研が支援拡充の事情

理化学研究所は若手研究者の支援策を大幅に拡充する。若手の研究室主宰者に対し、新たに研究室立ち上げ費用として1000万円程度を用意する。さらに大学院生やポスドク研究員の給与をそれぞれ年収ベースで約50万円分、約90万円分をそれぞれ引き上げる。研究に集中できる環境を整えるとともに、賃上げ機運が高まる中、研究機関も応える。

理研白眉制度として運用してきた若手研究者支援策を拡充し、理研ECLプログラムを創設する。

30歳前後で研究スタッフ2人、35歳前後でスタッフ5人を抱える研究室を持て、大学のような教育業務の負担はない。ノーベル賞級の研究では、研究者の30代前後の成果が後年評価されることが多い。研究者としても最も重要な時期に研究に没頭できる。

いずれも研究室立ち上げ費用として1000万円を用意し、大学などに転出する際は環境構築を支援する。転入と転出を共に支援することで研究者を囲い込まず、学術界の頭脳循環を促す。

さらにポスドク研究員らの年収を従来比1―2割引き上げる。これは1月時点の在籍で換算すると総額で約2億円の人材投資になる。ポスドク研究員の月給は55万円。日本学術振興会の特別研究員制度では博士研究員の中でも特に優れた研究者への奨励金が月額44万6000円だった。優秀な人材獲得を目指す。

研究費も拡充する。2―3年目の研究予算を100万から150万円に引き上げる。国公立大学では教授であっても大学からの支給は年間数十万円の機関もあった。

自由に使える予算があると、研究室が求める研究を進めながら、自身の研究の独自性を追求できるようになる。

背景には急激な物価上昇がある。収入が不安定な若手は物価高の影響を受けやすく、賃上げは公的研究機関の共通課題だった。理研が先鞭を付けることで、大学なども続くと見られる。

日刊工業新聞 2023年1月26日

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