阪和興業の「シニア人事制度」が軌道に、職群5段階の狙い
阪和興業が2020年度にスタートした「シニア人事制度」が軌道に乗りつつある。60歳定年は従来通りだが、雇用延長の流れに沿って契約社員としての雇用に一定のルールを設けた。
退職者の約9割はこれまでも会社に残っている。契約社員になる際に会社は個人ごとに部門と処遇を設定してきたが、公平性の観点で見直した形だ。
「定年後もモチベーション高く活躍してほしい。現役時の評価で5段階のいずれかの職群に当てはめ、個人にも一部選択肢を持たせた」と鶴田秀行理事人事・総務担当兼人事部長は強調する。
定年後の給与は下がるという〞世間相場뗉と違い、報酬は目標の達成度で変動し、職群を移動できる成果主義を定年後も採る。制度の適用は65歳までで、1年単位の契約更新。現役の社員と同様、半年ごとに評価面談を行う仕組みだ。
5段階の職群は、管理職経験者対象の「シニア理事」「シニアエグゼクティブ」「シニアエキスパート」、総合職経験者ら向けの「シニアスタッフA」、一般職経験者の「同B」で構成している。
本社で管理職だった高評価の社員がシニアエグゼクティブ職群でグループ企業の経営人材として活躍する一方で、シニアスタッフA・B職群では週3―4日、時短勤務など自分のペースで働くことを選択する人がいる。阪和興業本体の役職定年は60歳だが、意欲ある人には定年後も子会社などで活躍の場が提供される。
鉄鋼などを扱う商社の同社は「そこか(即納・小口・加工)戦略」「M&A(合併・買収)+A(アライアンス)」でグループ力を高め、収益を拡大。子会社は21年度に88社と約10年前から倍増している。
「意欲的で働き続けたい人は多く、処遇は重要だ」(鶴田理事)。同社は50歳以降の社員に、将来の生き方を考える契機として「ラインプラン研修」を行うなど、中長期の人生設計を支援している。