阪和興業が中期経営計画を再設定、練り直しのポイント
阪和興業は2022年度に、現在進行している20―22年度の中期経営計画を再設定する。21年度連結業績の経常利益予想は500億円で、最終年度目標の300億円をクリアする見通しのためだ。再設定では4年か5年への期間の延長が有力視される。コロナ禍からの需要回復や資源価格の上昇、戦略投資の収益化などから売上高、鉄鋼取扱重量とも目標に迫る勢い。中国経済や国内製造業の動向をどこまで読み込み、高い目標を打ち立てるのか注目される。(編集委員・山中久仁昭)
「創業以来、最高の数値を更新できた。通期も当初予想を大幅に上回りそうだ」。古川弘成社長は11月半ば、4―9月期決算発表でこう強調した。経常利益が306億円、当期利益が209億円と前年同期の約3倍となった。
阪和興業は22年度までの中計に売上高2兆1000億円、経常利益300億円、連結新規取引先累計5000社などの目標を盛り込んだ。鋼材需要の厳しい20年度上期の策定だったこともあり、古川社長は「(早期達成とは)見通しが甘かった」と笑いつつ、「構造的変革はまだ折り返し地点」と気を引き締める。
練り直す中計は22年度の早期に公表する。さらに高い数値を課して挑戦する姿勢を示すが、収益の源泉となる二つの作戦をどう磨き上げるのか。「そこか」(即納・小口・加工)による国内市場深耕と、「東南アジアにもう一つの阪和」というグローバル戦略だ。
同社は祖業の鉄鋼販売に加え、原料、食品、エネルギーなど業容を拡大。国内の鉄鋼需要が先細りする中で海外子会社などへの期待も高まる。中計が目指す年間鉄鋼取扱量1500万トンに対し、4ー9月期は前年同期比25・9%増の705万トン。内訳は阪和単体が500万トン、国内子会社が39万トン、海外子会社が166万トンだった。
新規成長の芽を育むため、現中計で国内外の「M&A(合併・買収)+A(提携)」の投資枠500億円を設けている。計画練り直しで従来投資をどう総括し、資金を有効活用するかも焦点となる。
今後の成長は、中国の青山実業や徳龍鋼鉄などとの協業、インドネシアなどでの資源事業に負うところが大きく、米国対中国など国際関係の推移も勘案すべき要因といえそうだ。