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日本初の浮体式”洋上風力発電“稼働、戸田建設が描く50年10億kW導入の将来像

日本初の浮体式”洋上風力発電“稼働、戸田建設が描く50年10億kW導入の将来像

将来、海上に洋上風力の建設基地ができ、水素製造や海洋研究も担う(イメージ図)

2024年1月、長崎県の五島列島沖で風車8基が稼働する。日本初となる浮体式の洋上風力発電所(ウインドファーム)だ。事業を主導する戸田建設は50年に浮体式洋上風力発電で出力10億キロワット分(原子力発電1000基分)を導入する将来像を描く。全国各地に風車の量産拠点もでき、地域経済も浮上させる。

戸田建設の浮体式洋上風力発電は、風車が釣りの「浮き」のように海に浮かび、傾いても元の姿勢に戻る。13年に環境省の事業で出力2000キロワット1基を五島列島沖に設置後、現在も運転を継続している。

国内の電源に占める風力発電の比率は陸上も含めて1%未満。政府は21年に「洋上風力産業ビジョン」を策定し、40年までに最大4500万キロワットの導入を掲げた。現在は海底に固定する「着床式」が主流だが、日本周辺は浅瀬が少なく、実現には浮体式の普及が欠かせない。戸田建設はENEOSや大阪ガス、INPEXなどとともに、一般社団法人としてオフショアウィンドファーム事業推進協会(東京都中央区)を結成し、五島列島や奥尻島(北海道)での事業を共同で進める。

五島列島沖で稼働する浮体式風力発電(撮影=西山芳一氏)

戸田建設は陸上で部材を生産し、洋上で組み立てる建設基地として、近未来的な構造物を海上に浮かべる構想だ。保守作業にも使えるほか、発電した電気で水素を製造し、陸上へ輸送する拠点にもできる。「すでに五島列島では水素をつくり、漁船を航行させた。建設基地は気象や海洋の研究拠点、レジャー施設にもできる」(今井雅則戸田建設会長)と語る。

壮大な事業の実現を目指す戸田建設は3月、大阪大学大学院工学研究科と「洋上風車システムインテグレーション共同研究講座」を開設する。船舶海洋工学を専門とする飯島一博教授とタッグを組み、まずは100万キロワットのウインドファームを念頭に必要な技術を研究する。

講座の研究テーマの一つが量産化。ウインドファームには年100基規模の風車の供給が必要となる。自動化を採り入れ、100―200メートル級の大型構造物を効率的に製造できる方法を確立する。また設置方法も課題だ。「いかに洋上での工事を少なくするかがポイント。洋上の建設基地は良いアイデア」(飯島教授)と賛同する。

送電も研究テーマだ。場所によっては沖合100キロメートルから電気を送ることになる。海底ケーブルを敷設する方法があるが、水素やアンモニアへの変換、蓄電も選択肢となる。

飯島教授は講座の狙いに人材育成もあげる。計画通りなら20年―30年後、洋上風力は数万人が働く産業になる。設計や運転、保守の知識を持つ人材と、それらの人材を束ねて事業を先導できる人材が求められる。「(阪大の)工学研究科のあらゆる研究を統合化し、洋上風力総合工学を作りたい」(同)と展望を語る。

日本企業は風車製造から撤退したが、第一線で働いていた人材が残っており、国内に機械メーカーも集積している。「産業のすそ野が広いが、洋上風力に向かう流れができていない。研究や事業が洋上風力に関連していると気付いていない方も多い」のが課題だ。戸田建設と立ち上げる講座を核とし、洋上風力産業に人材や技術を呼び込む。

要素技術持つ企業の参入期待/戸田建設会長・今井雅則氏

戸田建設会長・今井雅則氏

浮体式洋上風力発電の事業化に取り組む戸田建設の今井雅則会長に今後の方針や見通しなどを聞いた。

―10億キロワットの導入を掲げた背景を教えて下さい。
 「国際エネルギー機関(IEA)によると、日本には洋上風力発電で1次エネルギー消費量の1・8倍を供給できる潜在能力がある。これだけの可能性があるが、生かし切れていない。我々は1次エネルギーの半分を供給できる10億キロワットの導入を提案している。陸上風力などほかの電源も入れると、国産エネルギーを100%化できる」

―日本経済に貢献する理由は。
 「10億キロワットには、1基1万キロワットの風車が10万基必要となる。年5000基を製造しても20年かかり、大きな産業となる。稼働から20年後には更新を迎えるため、また製造が必要となる。仮に全国に100カ所の生産拠点があると、1カ所で年50本の需要となり、地域産業に貢献する」

―コストは。
 「日本のベース電源を狙っており、発電コストが高ければ国内産業の競争力向上に貢献できない。1キロワット時7円を目指して大型化、量産化する。発電した電気を7円で売っても20年間の事業規模は368兆円。建設やメンテナンスに費用がかかっても、事業者は利益を出せる」

―国は洋上風力の国内調達比率60%を目標としています。1基に数万点の部品が搭載されるので、関連企業にも波及効果が大きいとみられます。
 「60%と言わず、100%にしたらいい。造船も含め、要素技術を持つ日本企業が多い。そうした企業が洋上風力産業に参入することを期待する。地域の建設業者なども地産地消型で携われば、地域再生にもなる。メンテナンスや更新需要もあるため、持続的な産業になる」

―洋上風力発電は潜在力が認められながらも導入が進んでいません。計画通りにいきますか。
 「今、国の動きが加速している。25年に1カ所で100万キロワット級の洋上ウインドファームをつくるので見ていてほしい。我々は実際に浮体式を稼働させており、ノウハウを持っている。大型化と量産化の課題を乗り越え、その知見をみんなで共有すれば各地で生産できる。日本は複雑で付加価値の高い製品をつくって海外に売ってきた。レベルが高く、多様性に富んだ技術がある国だから本気になればできるはずだ」

―他社にも参入を呼びかける理由は。
 「事業規模が大き過ぎて1社では無理だ。我々がプラットフォームとなり、製造などを手分けしてやる。洋上ウインドファームを稼働させた実績を示し、多くの企業に洋上風力が有望な市場だと気付いてほしい。大阪大学との共同研究でも参加企業を募る」

日刊工業新聞 2023年01月20日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
風車は300メートル級へ向けて大型化しているそうです。東京タワー級の風車が海にたくさん浮く光景ってどんな感じでしょうか。その300メートル級を何千基も供給する必要があります。1カ所の生産拠点で年50基をつくろうとすると、サプライチェーンを含めて多くの企業の参加が必要となります。

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