ニュースイッチ

iPhone上位機種が特に売れない…減少する携帯端末出荷、今後も低迷のワケ

物価高・円安響く
iPhone上位機種が特に売れない…減少する携帯端末出荷、今後も低迷のワケ

昨年9月に米アップルが発売した「iPhone14」は価格が「同13」よりも引き上げられた(同社提供)

物価高騰や為替の円安を背景に携帯電話端末の出荷台数が減少している。MM総研(東京都港区)によると、2022年度の国内携帯電話端末の総出荷台数は、00年度以降では過去最少となる見通し。公共料金や生活必需品の価格上昇を踏まえて通信費を見直す世帯が増えつつあり、端末自体の価格上昇に伴う買い控えも響く。携帯通信事業者や端末メーカーはこうした逆風下で、いかに消費者の購買意欲を喚起できるか試される。(張谷京子)

「22年10月―23年3月期の出だしは良くない。物価が上昇する中で、家計のひもを固くする人が増えている。特に携帯電話は、ぜいたく品と捉えられることが多い」。MM総研の横田英明常務は、足元の携帯電話端末市場についてこう語る。

同社が22年11月に公表した調査結果によると、22年度通期の国内携帯電話端末の総出荷台数は前年度比17%減の3041万台になる見通し。足元の物価上昇は加速しており、22年11月時点の予想をさらに下回る可能性も「否定できない」(横田常務)という。

携帯端末自体の値上がりも進む。総務省によると、22年12月の東京都区部の消費者物価指数(中旬速報値)において、携帯電話機は前年同月比22・1%上昇した。実際、米アップルは22年7月、円安進行を受け、日本市場でスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を値上げ。同9月には、アイフォーンの新モデル「14」の販売価格を従来モデル「13」の発売時と比べて引き上げている。

アイフォーンは元々高価格帯が主力とされるが、足元では「特にアイフォーンのハイエンドモデルが売れていない」(同)。人気の高いアイフォーンの値上げが消費者の買い控えを招くと、携帯端末全体の出荷減につながりかねない。

23年度以降も国内携帯電話端末市場は低迷が続くとみられる。“1円スマホ”の規制強化が進む可能性が高いからだ。19年施行の改正電気通信事業法により、現在、端末と回線をセットで販売する際に、端末を大幅に値引きすることは禁止されている。ただ、端末単体に関する制限はなく、販売店が1円でスマホを売っているケースがある。これについて、総務省の有識者会議では22年11月に携帯通信各社へのヒアリングを実施。23年夏ごろに報告書がまとめられる予定だ。

携帯電話販売代理店大手のティーガイアは、23年度以降の携帯端末販売の見通しを「今後、伸びることはない。特に機種変更の需要が減っている」と明言。MM総研は、26年度の国内携帯電話端末の出荷台数を21年度比19・3%減の2955万台と予測する。

スマホ市場では買い換えサイクルの長期化に加え、高価格帯モデルの需要減少、中古端末や低価格モデルの需要拡大といった傾向が予測される。携帯通信事業者や販売代理店、メーカーは戦い方や力量が問われる。


【関連記事】 スマホに多くの部材を供給する大手化学メーカーの総合力
日刊工業新聞 2023年01月18日

編集部のおすすめ