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金属加工メーカーに学ぶ、工場省エネのヒント

金属加工メーカーに学ぶ、工場省エネのヒント

炭酸ガスレーザー加工機から、エネルギー効率の高いファイバーレーザー加工機へと置き換えた生産現場

製造業にとって省エネは大きな課題だ。特にさまざまな設備で多品種少量生産に対応する金属加工業では管理も容易ではない。

プレスから板金、レーザー加工、溶接まで手がける志村プレス工業所(愛知県小牧市、志村正広社長)は、工場の省エネで大きな成果を挙げている。志村社長はセミナーなどで自社の事例を紹介する。「皆にも利益を上げてほしい」(志村社長)と、惜しげもなく体験を伝えるのは自らもエネルギーコストに悩んでいたからだ。

同社はプレス加工で創業後、業容を徐々に変えて現在のように多彩な設備を保有するようになった。その過程で少しずつ拡大したエネルギーコストを見直すきっかけとなる出来事が起きる。2011年の東日本大震災だ。

震災直後に電力会社から電気代の値上げ交渉があり、エネルギーの使用状況の見直しに着手した。専門家による診断で、エネルギー消費の主要因は炭酸ガスレーザー加工機とコンプレッサーだとわかった。

金属加工の端材の活用がチタン製アクセサリー製造という新事業に発展した

そこで14年にエネルギー効率の高いファイバーレーザー加工機を導入した。15年にはコンプレッサー2台を、生産状況に応じて1台のみの稼働に制御できる機種に替えた。同時に工場の配管やエアー漏れを見直し、全体で省エネ効果を高めている。決して安い投資ではないが、補助金も活用して決断した。

志村社長は「効率化には投資が不可欠」と訴える。省エネで創出した利益は空調の改善に振り向けた。社員の労働環境を改善した後には、さらに働きがいを追求する新たな取り組みを始めている。

現在、社内で発生した金属端材を若手の訓練に活用している。端材は加工後に収納小物にして社員の創造性を刺激している。この取り組みはチタン製アクセサリーを製造する新規事業に発展した。

省エネも端材の活用も時流を捉えた環境に配慮したモノづくりの追求だ。「皆で実行すれば地球環境にプラスになる」(同)。思いを伝えるため工場見学にも積極的に応じている。


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日刊工業新聞 2022年11月15日

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